こんばんにゃ~
北の猫男爵です
今日は月曜日ですね
“マツジュン”こと嵐の松本潤と松嶋菜々子の共演で注目を集めた「月9ドラマ」の『ラッキーセブン』がいよいよ最終回を迎えました
視聴率は思った以上に伸びませんでしたが、瑛太や大泉洋らの豪華共演陣が脇を固め、非常に見応えのあるドラマだったのではないでしょうか
そして毎週月曜日の僕のブログ
といえば、この『ラッキーセブン』に対抗して、僕自身が毎週必死で締め切りに間に合うように脚本を書きおろした
、連続ブログ小説『アフタースタイル』、通称「アフスタ」をお送りする日です
今週も何とか原稿が無事に間に合いましたので、第9話をお送りしたいと思います
。物語はいよいよクライマックスに向かい大詰めになってきました
楽しみにしていた方も、そうでない方も、どうか長い文章ですが、飽きずに最後までご覧になってください
それでは早速、ご覧下さい
『アフタースタイル』 脚本・演出:猫男爵
<CAST>
大澤怜雄:滝沢秀明
町村真奈美:加藤あい
南條茜:綾瀬はるか
望月龍平:小栗 旬
町村功治:渡辺いっけい
町村由紀:岡江久美子
藤堂弥生:天海祐希
上田達也:妻夫木聡
大澤すみれ:菅野美穂
小峰健太郎:竹野内豊
馬場勝一:橋爪 功
森岡夏稀:山口智子(ゲスト出演)
南條卓:豊川悦司(特別出演)
※この「連続ブログ小説」はフィクションであり、登場する人物・名称等は全て架空のものであり実在しません。
☆カット9☆ 『意地を張る女』
<前回までのあらすじ>
幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父と同じ美容師の道を志した主人公の大澤怜雄は、天性の才能を活かし、都内有名美容室「アクア」のNO・2にまで登りつめた。しかし、怜雄は突然「アクア」を辞め、両親が経営していた美容室を再開させる事にした。
縁があってアシスタントとして南條茜を雇う事になった怜雄のもとには、なぜか「心の悩み」を抱えた客が訪れる。怜雄は髪を切りながらも、客が心から笑って帰る事ができるように「心の悩み」を見事に解決していく。
そんな客の悩みをまたも解決した怜雄は、行きつけの近所の喫茶店「ケンタロウ」にいたのだが、そこに森岡夏稀という1人の女性が姿を現したのだった。
喫茶店「ケンタロウ」では、店主の小峰健太郎が以前交際していた森岡夏稀がカウンターに座り、コーヒーを飲んでいた
。その少し離れたテーブルでは、偶然そこに居合わせた大澤怜雄と町村真奈美が、静かに2人の会話に耳を傾けていた
『久しぶりだわ、健太郎のコーヒー飲むの。昔と何も変わってない、本当にいつ飲んでも心が落ち着くわ。』夏稀はひと口ひと口味わうようにコーヒーを飲んでいた。
『まあ、これだけが俺のとりえだからな。』健太郎は嬉しそうな顔を浮かべてそう言った。
『それもそうね。』夏稀はすぐにそう言った。
『おい!』健太郎は笑いながら夏稀につっこんだ。
『何か凄く楽しそうだけど、あの2人ってどういう関係かしら?』真奈美は興味津々だった。
『姉弟とか?いや親戚かな?』怜雄は真奈美のその問いに答えた。
『違うでしょ、どう考えても男女の仲だと思うけど。』真奈美は真剣な顔で話した。
『健太郎さんに女か?あまり想像した事なかったな。』怜雄は健太郎の方を見て呟いた。
『おい、2人ともそんな所で何をごちゃごちゃ言っているんだよ。どうせ俺達の事を話しているんだろ。』健太郎が怜雄と真奈美に声をかけた。
『いや、別に。』怜雄は何でもないフリをした。
『こいつは、俺の元彼女で森岡夏稀って言うんだ、紹介するからこっちに来いよ。』健太郎はそう言いながら2人を手招きした。
『う、うん・・・』怜雄は真奈美の顔を見ながら小声でうなずいた。
怜雄と真奈美は夏稀が座っているカウンターに席
を移し、健太郎に新しいコーヒー
を入れてもらった。
『何だ、俺はてっきり今付き合っている人かと。』怜雄は健太郎に対して口を開いた。
『嘘ばっかり、姉弟とか親戚とか言ってたくせに。』真奈美はすぐにそう言った。
『黙ってれよ真奈美。』怜雄は真奈美の口を塞いだ。
『まあ、私の方が彼よりは年上だからね、そう見られても仕方ないわね。でもね、こう見えても付き合っていた頃は、健太郎は私の事をぐいぐい引っ張ってくれる頼りがいのある男だったのよ。』夏稀が昔の事を思い出しながら、怜雄と真奈美にそう言った。
『おい、それじゃ今は頼りがいが無いみたいじゃないか。』健太郎は口を尖らせて夏稀に言った。
『それは失礼しました。』夏稀は口元を緩めながらそう言った。
『夏稀はイタリアでレストラン
を経営しているんだ。5年前に、向こうで店を出したいって言い出してね、まあそれは夏稀の夢でもあったからね。』健太郎は当時の事を振り返りながら怜雄と真奈美に夏稀の事を話した。
『で、私はイタリアで、健太郎は日本で、お互い夢を追い掛ける事にしたってわけ。』夏稀は顎に両手をあて、肘をテーブルにつきながらそう言った。
『それで別れたんですか?』怜雄は夏稀に尋ねた。
『まあ、そんなところよ。』夏稀は怜雄に答えた。
『でも、それって・・・』真奈美は何かを言いたそうだった。
『ほら、夢って一生にそんなに何度も叶えられる事じゃないでしょ、でも男なら他にもいくらでもいるからね。』夏稀は笑みを浮かべながらそう話した。
『・・・』健太郎はコーヒーカップを磨きながら苦笑いを浮かべていた。そしてすぐに口を開いて夏稀に話した。『ほら、2人とも困っているじゃないか。』
『えっ?』夏稀は健太郎の言葉に思わず怜雄と真奈美の方を見た。
『でもね、これが夏稀なんだよ。2人とも誤解しないでくれよ、こいつは口は悪いけど、性格はピカイチなんだ。』健太郎はそう怜雄と真奈美に話した。
『ちょっと!それは褒めてるの?けなしてるの?』夏稀はそう言いながら健太郎をジロっと睨んだ。
怜雄と真奈美はとりあえず愛想笑いを浮かべていた。
『で、今日はどうした?何かあったから来たんだろ?日本に戻ってくるのは5年ぶりだろ。』健太郎は気になっていた事を夏稀に尋ねた。
『実はね私、2年前から日本に戻って来てたのよ。』夏稀は申し訳なさそうに言った。
『何だよそれ、2年前って!俺達、別れても何かあった時は必ず連絡取り合おうって、それが約束だっただろ?』健太郎は少し驚いた顔でそう夏稀に言った。
『まあ、色々とあったのよ。』夏稀は苦笑いを浮かべていた。
『色々って何だよ?』健太郎はさらに夏稀に尋ねた。
『色々って色々よ・・・今は表参道で店を開いている。』夏稀はそう答えた。
『あの、健太郎さん、俺達そろそろ時間も遅いので帰るから。』怜雄は申し訳なさそうに健太郎にそう言った。
『何だよ、まだいいじゃないか怜雄も真奈美ちゃんも。』健太郎は2人を引き留めようとした。
『そうよ、気を遣わなくてもいいのよ、私達に。』夏稀も怜を真奈美にそう言った。
『ええ、でも本当に帰ります・・・それじゃ。』怜雄は真奈美を引っ張るように店を出て行った。
『あの子たちは?』そんな店を出て行く2人の姿を見て夏稀は健太郎に尋ねた。
『ああ、大澤怜雄って言ってね、近所で美容室やっているんだよ。ほら、お前も知らないかな「アクア」って美容室あるだろ、あそこで昔働いていたんだ。それとその美容室の隣りの本屋の娘で怜雄の幼なじみの真奈美ちゃんだ。』健太郎は真奈美にそう説明した。
『へえ、美容師ね。』夏稀は小声で呟いた。
『そんな事より、何で帰って来ているなら、俺に一言声を掛けてくれなかったんだ?』健太郎はまた夏稀に問い詰めた。
『だから、色々あったの!』夏稀は先程と同じ答えだった。
『色々って?』健太郎もまた同じ質問をした。
『色々ったら色々よ!』夏稀は少し声を荒げて答えた。
店を出た怜雄と真奈美は、自宅の方へ向かい歩いていた。
『健太郎さんに、あんな元カノがいたとはな。』怜雄はポツリと呟いた。
『健太郎さんて優しいし、どことなく男らしさもあるし、モテるんじゃないの?』真奈美はそう話した。
『そうか、髭生えてるからそう見えるだけだろ。』怜雄はそう言った。
『髭は関係ないんじゃないの?』真奈美は真剣に答えた。
『冗談だよ、健太郎さんはきっと待っていたんじゃないかな、夏稀さんの事を・・・』怜雄は健太郎の気持ちを探るように真奈美にそう話した。
『おい、遅かったじゃないか真奈美!あれ、怜雄も一緒か。』町村家の前に着くと、真奈美の父親の町村功治が家の前でそう言った。
『ケンタロウで一緒なったんです。』怜雄は功治にそう答えた。
『お前らまさか・・・』功治は小声で呟いた。
『えっ?何?』真奈美が功治に尋ねた。
『いや、何でもない。母さん、真奈美が帰ってきたぞ。』功治は家の中にいる真奈美に母親の町村由紀を呼んだ。
『遅かったわね真奈美、珍しく連絡も無いから心配したのよ。』由紀は心配した表情を浮かべて言った。
『2人とも、私をいくつだと思ってるの?もうすぐ30歳よ。』真奈美は少し憮然とした表情で言った。
『じゃ、俺は行きますね。おじさんもおばさんも、おやすみなさい。』怜雄はそう言うとその場を後にした。
その翌日、怜雄はいつものように競馬場にいた
『おかしいな、今日は馬場のじっちゃん来ないのかな?もう7レースだしな・・・このレース終わったら帰るとするか。』怜雄は当たり見ながら、勝一がいない事を確認してそう独り言を呟いていた。
その時、怜雄の隣りから、もの凄い興奮した女性の声が聞こえた。『よし、そこよ抜け!抜け!』
『うるさい女だな。』怜雄は思わず不機嫌な顔をしながら、その女性の顔を覗き込んだ。
『もっと、もっと抜け!』さらにその女性は声を荒げた。
『あれ、もしかして夏稀さん?』怜雄は目を丸くした。
『うん?あんたは昨日の。』その女性は怜雄の言葉に気づき、怜雄の方を向いてそう話した。その女性は、健太郎の元彼女の森岡夏稀だった。
『あれ?ねえ、今のどうなったの、抜いたの?抜けなかった?』夏稀は真剣な顔で怜雄に尋ねた。
その頃、「janus」を訪れていたのは、怜雄の姉の大澤すみれだった。すみれはチャイムを鳴らし、玄関の前に立っていた
『留守みたいね、また競馬でも行っているのかしら。』そう独り言を呟くすみれの手には1冊の雑誌があり、そこには「世界に進出する南條グループ」という見出しが載っていた。
怜雄と夏稀は競馬場
を後にして、怜雄の友人である望月龍平がバイトをしているバーを訪れていた
『よっ、怜雄!』オーダーを取りに来たのは龍平だった。
『よっ龍平、とりあえず生2つくれ。』怜雄は龍平にそう言った。
『あれ?誰だよこの人?まさか年上の彼女でもできたのか怜雄?』龍平は怜雄の耳元で小声で呟いた。
『はい、そうです。彼女です、はじめまして。』夏稀はテンション高めの声で龍平にそう言った。
『えっ、マジで?』龍平は思わずそう言った。
『ちょっと夏稀さん!違うよ、ただの知り合いだよ。』怜雄は夏稀に声を掛けた後に龍平にそう答えた。
『そっか、何か楽しい人だな、どうぞごゆっくり。』龍平はそう言葉を残しカウンターへと消えていった。
数十分後、2人はお酒
も入り少しだけほろ酔いになっていた。すると夏稀が自分の本音を話し始めた。
『本当は、本当はね、健太郎に止めて欲しかったんだ・・・』夏稀は下を向きながら額に手をあててそう言った。
『えっ?止めるって、イタリアに行く事を?』怜雄は夏稀に尋ねた。
『そう、イタリアなんかに行かないで俺の側にいてくれ!って言って欲しかった・・・』夏稀は噛み締めるようにそう言った。
『でも、健太郎さんがそれを言わなかったのは、それはあなたの夢を叶えてあげたかったからじゃないんですか?』怜雄は少し間を置いてそう話した。
『そんなのは卑怯よ・・・私の夢とかを理由に自分の気持ちを伝えないのは卑怯よ!女は男の事を考えながら仕事なんて出来ないのよ・・・男を理由に夢を諦める事だって大切なのよ、その男がそれだけの価値のある男の場合は・・・私はそう思っている。』夏稀は少し声を荒げて、真剣な目で怜雄を見つめながらそう話した。
『夏稀さんは、健太郎さんにそれだけの価値があったと?』怜雄は夏稀に尋ねた。
『健太郎は良い男よ、それだけの魅力のある男だったわ。でも最後にその言葉が足りなかった・・・健太郎は優し過ぎる・・・ねえ、髪切ってくれない?』夏稀は怜雄の問いに答えたかと思うと、唐突にそう言い出した。
『何ですかいきなり?ちょっと酔っ払い過ぎですよ夏稀さん、だいたいこんな所で髪を切れるわけないじゃないですか!』怜雄は夏稀を突き放した。
『誰も今すぐなんて言ってないでしょ、今度の火曜日、火曜日しかやっていないんでしょ、あなたのお店?お願い切って!』夏稀は酔いながらも怜雄にお願いした。
『ダメですよ、予約している人がちゃんといるんですから。』怜雄は迷惑そうに断った。
『ケチね。』夏稀はそう呟いた。
『ケチとかの問題じゃないだろ・・・』怜雄も小声で呟いた。
『何か言った?』その怜雄の呟きに反応して夏稀が声を上げた。
『いえ、ダメなものはダメですから、ちゃんと予約してから来てください。』怜雄は夏稀にそう言った。
その2人の話のやり取りを、カウンターでグラスを磨きながらずっと聞いていた
龍平は何かを思いついた顔をした。
『じゃ、俺そろそろ先に帰りますね。』そう言うと怜雄は席を立った。
『は~い、おやすみなさい。』夏稀はそんな怜雄にそう声を掛けた。
怜雄が会計を済ませて帰る姿を見届けて、龍平は夏稀の所に行き話しかけた。
『あの・・・』龍平は小声で話しかけた。
『あっ、君はさっきの。』夏稀は龍平に気づいた。
『俺に良い案があるんですけど。』龍平は小声で夏稀に話した。
『えっ?』夏稀は思わず耳に手をあてた。
『任せておいて下さい。』龍平は夏稀にそう言った。
『何かよく分からないけど、頼もしいね。』ほろ酔いで何の事だか夏稀はさっぱり理解していなかった。
龍平は一旦その場を離れて、携帯電話
を手にもち電話をかけた。
『はい、もしもし。』龍平がかけた電話に出たのは女性の声だった。
『あっ、茜ちゃん?』龍平はそう言葉を発した。
『どうしたんですか龍平さん、こんな時間に。』電話に声に主は怜雄の美容室でアシスタントを務める南條茜だったが、突然の龍平の電話に驚いている様子だった。
『ちょっと頼みたい事があるんだけどさ・・・』龍平はそう言葉を発した。
その頃、都内有名美容室「アクア」では、仕事を終えた美容師の上田達也がオーナーの藤堂弥生を待ち、オーナー室の椅子に腰を掛けていた
『どうしたの?珍しいわね、仕事終わりにここへ来るなんて。』そう言いながら部屋に入ってきたのは藤堂だった。
『オーナー、これを受け取ってください。』上田はそう言うと、1枚の白い封筒を差し出した。
『何かしらこれは?』藤堂は筆字で「辞表届」と書かれたその白い封筒を見つめた。
『そういう事です。今日限りでここを辞めさせてもらいます。』上田は藤堂の目を見つめてそう答えた。
『本気?』藤堂は睨みつけるような眼差しで尋ねた。
『ええ、本気です。』上田はそう答えた。
『もう二度と戻れないわよ、それでもいいのね?』藤堂は上田にそう話した。
『はい。』上田は即答した。
『後で後悔しても、知らないわよ。』藤堂は最後に念を押した。
『構いません。』上田の意志は変わらなかった。
『分かったわ、好きにしなさい。』藤堂は白い封筒をデスクの中に入れながらそう話した。
『お世話になりました。』上田は深々と藤堂に頭を下げると、すぐに部屋を出て行った。
その上田の姿を見ながら、藤堂は憮然としていた。
2日後、営業日の「janus」では怜雄が準備をしていた。するとお店の電話が鳴り
、茜が受話器を取った。
『ありがとうございます、美容室「janus」でございます。はい、はい、あっ、そうですか・・・かしこまりました。』茜は少しトーンを落としながら電話対応をした。
『どうしたの茜ちゃん?』怜雄はすぐに尋ねた。
『あの・・・今日来るはずのお客様からキャンセルの電話でした。』茜は残念そうに怜雄に話した。
『キャンセル?そうか・・・たまにはそういう事もあるさ。じゃ、今日は店を閉めよう。』怜雄はすぐに気持ちを切り替えて茜に笑顔でそう話した。
その時、店の扉が開き、夏稀が入ってきた
『よっ!怜雄くん!』夏稀はいつのように明るい雰囲気で店に入ってきた。
『夏稀さん、どうしたんですか、こんな所に来て?』怜雄は夏稀に尋ねた。
『だから、髪を切ってってお願いしたでしょ、もう忘れたの?』夏稀は笑いながらそう話した。
『それはちゃんと予約をしてから来て下さいって言いましたよね。』怜雄は苦笑いを浮かべて言った。
『今日は、お客来るの?』夏稀は怜雄に尋ねた。
『今日は・・・』怜雄は思わず言葉に詰まった。
『いなんだよね、じゃあいいじゃん!髪切ってよ。』夏稀は笑顔でそう言った。
『何かおかしいな・・・』怜雄は何かその変な感覚を悟っているような感じだった。
『あっ!もしかして龍平さん・・・』茜が思わず声を上げた。
『茜ちゃん、龍平がどうかしたのか?』その茜に言葉に対して怜雄が問いただした。
『いえ・・・』茜は誤魔化そうとした。
『茜ちゃん、正直に言わないとクビだよ。』怜雄は半分脅しのような口調で茜に詰め寄った。
『えっ!それは勘弁して下さい・・・実は・・・』茜は仕方なく、龍平から電話が来た事を怜雄に全部話した。
数分後、夏稀は椅子に座り
、怜雄と茜は髪を切る準備をしていた
『龍平の奴、こんな手の込んだ小細工しやがって、後で覚えておけよ。』怜雄はそう呟いていた。
『きっと龍平さんがこんな事をしたのには、何か理由があるはずですよ。じゃないと、私に予約の人の情報を聞く事なんてしなかったはずです。』茜は怜雄にそう言った。
『茜ちゃんも茜ちゃんじゃないか、まずお客に関する情報を他人に教えちゃだめだよ、分かった?』怜雄は優しい口調で茜を注意した。
『はい、すみません・・・』茜は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
実は龍平は、夏稀をこの日どうしても髪を切らせたいために、茜からこの日予約を入れていたお客の個人情報を教えてもらい、「janus」よりも安くて上手なお店があるというチラシや電話を相手に揺さぶりをかけ、客にキャンセルの電話を入れるようにそそのかしたのだった。
『それでは夏稀さん、今日はどんな風にしますか?』龍平はコームとシザースを手にして夏稀に尋ねた。
『そうね・・・髪の事は私よく分からないから、あなたに任せるわ。今の私に会った髪型にして、もちろん外見ではなくて、私の心に似合った感じでね。』鏡越しに怜雄の顔をしっかりと見ながら夏稀はそう答えた。
『分かりました。』怜雄はその夏稀の言葉にうなずき返事をした。
『実はね、私、来週イタリアに経つの
向こうで、もうひと花咲かせようと思ってね。』髪を切られながら夏稀が話し出した。
『それで、今日は健太郎さんに会いに来たんですか?』怜雄はそう尋ねた。
『まあ、そんなところかな。』夏稀は答えた。
『実はね、5年前にイタリアに行って、私はある程度の成功は手に入れたのよ。本場で認められて、お店の人気も出て、でもね一番信用していた仲間に裏切られて、店の権利書と売上げ金
を根こそぎ持ち逃げされたの・・・』夏稀は隠されていたイタリアでの出来事を怜雄に話した。
『そんな・・・』後ろでその話を聞いている茜が思わず呟いた。
『もちろん、警察に被害届も出したけど、一文無しになった私に、待っている時間は無かったの・・・仕方なく私は日本に戻ってきて、一からやり直しよ。こんな時にどれだけ健太郎が側にいてくれたら・・・と思った事か。』夏稀は当時の辛い想いを思い出しながら語りだした。
『だったら、どうして健太郎さんに会いに来なかったんですか?』怜雄はすぐに夏稀に尋ねた。
『う~ん・・・私の精一杯の意地かな。きっと健太郎に会えば、彼は優しい言葉をかけてくれるし、心から私を癒してくれると思う。でも、私は自分の夢を追って健太郎から去っていったのよ、そんな私がそんな形で彼に会いに行く事は私の心のどこかにある意地が許さなかったのよ。』夏稀は真剣な表情で話した。
『夏稀さん、もうその意地ってやつ、捨ててもいい頃じゃないですか?』怜雄は優しい口調で夏稀に話した。
『そうね、それは私も分かっている、でも分かっていてもできない事ってあるのよ、分かる?』夏稀は怜雄に問いかけた。
『分かりますよ、でも・・・』怜雄は何かを夏稀に言おうとしたのが、すぐに夏稀が話し出した。
『あっ!そういえばさ、今度イタリアで出すお店の横にある美容室
とね、私のレストランとで提携してやっていこうと思っているの。髪を切った後は、レストランへっていうのもオシャレじゃない?』夏稀は怜雄の話をぶった切るようにそう話し出した。
『ええ、まあ・・・』怜雄はそう答えるしかなかった。
『あなた、そこに来て働かない?』夏稀は怜雄にそう尋ねた。
『えっ?俺がですか?』怜雄は夏稀の突然の誘いに驚いていた。
『そう。』夏稀は真剣な表情だった。
『イタリアで?』怜雄はもう一度聞きなおした。
『そうよ。イタリア人はみんなオシャレだし、あなたのその腕なら十分通用と思うけど。』夏稀はさらに怜雄を誘惑した。
『折角の良い話ですけど、俺にはここが合ってます。夏稀さんみたいな人が、日本に帰ってきた時に、こういう場所がなきゃ困るでしょ?』怜雄は少し間を置いた後、笑みを浮かべながらそう答えた。
『なるほどね、あなたは健太郎の言った通りの芯の強い人なのね。』夏稀は何か納得したような表情をした。
『夏稀さん、髪切り終わったら、健太郎さんにちゃんと会っておいでよ。このまま、イタリア行こうなんて、卑怯だからね。』怜雄は笑みを浮かべて、鏡越しに夏稀にそう話しかけた。
『・・・・』夏稀は怜雄のその言葉に下を向いたままだった。
『もうこっちには、帰ってこないつもりなんでしょ?』すかさず怜雄がそう言った。
『・・・・』夏稀は口を開こうとはしなかった。
『本当にそれでいいの?』怜雄は執拗に夏稀に尋ねた。
『いいわけないでしょ・・・』下を向いていた夏稀は震える声で小さく呟いた。
『本当は今度こそは止めて欲しいんでしょ?』怜雄は涙を流す夏稀に声を掛けた。
『そうよ、でも彼に話したら、きっとまた止めないわ・・・』夏稀は溢れる涙を抑えながら必死に話した。
『だったら、夏稀さんが自分で行くのをやめればいい事だよ。健太郎さんの側にいればいいじゃないか。』怜雄は優しく夏稀に語りかけた。
『健太郎は知っての通り、クソ真面目な人だから、私みたいな女は似合わないのよ。』夏稀は涙を拭きながら笑みを浮かべてそう言った。
『俺は、夢を追いかける人は嫌いじゃない、それだけ自分で未来を作ろうとしているからね。でも、自分で未来を作る事を諦める人は嫌いなんだよね。あなたは、まず健太郎さんに想いをぶつけるべきだ、後の事はその後に考えればいいよ。』怜雄は夏稀の目を見ながら話した。
『・・・・・』少しの間、夏稀は一点を見つめたままだった。そして口を開いた。
『私、日本に帰ってきて良かったわ。あなたみたいな人に会えたんですもの。その心意気に答えなきゃ、何のために髪を切りに来た分からないもね。髪を切り終わったら、健太郎に会って、ちゃんと話してくるね。』夏稀は怜雄に優しく背中を押された気持ちだった。
『はい、それが良いです。』怜雄は満面の笑みで答えた。
数十分後、喫茶店「ケンタロウ」には、夏稀と共に怜雄と茜もいた。
『何だよ、皆して。あれ?夏稀、もしかして怜雄に髪切ってもらったのか?』健太郎は夏稀の髪を見ながらそう言った。
『まあね、どう?似合う?』夏稀は健太郎に聞いた。
『ああ、似合ってるよ。』健太郎は優しい口調で答えた。
夏稀は横目で怜雄の方を見た。そして小さくうなずき、口を開いた。『あのね、健太郎。』
『うん?どうした?』健太郎はコーヒーを入れながら夏稀に尋ねた。
『実はね、私またイタリアに行こうと思って、向こうでもうひと花咲かせようかなって思って・・・』夏稀はそう健太郎に話した。
『・・・・』コーヒーを注ぐ健太郎の手が一瞬止まった。
まるで時間が止まったようなその空気の中、怜雄も茜も健太郎の答えに息を呑んでいた。
『夏稀、それは本当に叶えたい夢か?』健太郎が静かな口調で夏稀に尋ねた。
『もちろん。』夏稀はそう答えた。
『そっか、じゃ行ってこい!』健太郎は笑顔を浮かべて夏稀にそう言った。
『・・・・』夏稀はその言葉に思わず何も言えなかった。
すると、笑顔の健太郎がすぐに再び口を開いた。『その代わり、俺も一緒に行く事にする。』
『えっ?』健太郎のその言葉の意味が夏稀にはすぐに理解できなかった。
『俺もさ、向こうで店を出してみたいんだ。それに俺はお前の側にいたい。もう何かあった時にしか会えないのは辛すぎる。』健太郎は優しい表情で夏稀に話した。
『健太郎・・・』夏稀の心の中は嬉しさで溢れかえっていた。
喫茶店「ケンタロウ」から怜雄と茜が笑顔で出てきた。
『怜雄さん、良かったですね。夏稀さんも健太郎さんもやっとお互いの想いが通じて。』茜は安堵した顔を浮かべていた。
『そうだな、あの2人ならきっと素敵な未来を作れるよ。』怜雄も茜と同じ気持ちだった。
『でも、寂しくなりますね。健太郎さんのコーヒーが飲めなくなるのは・・・』茜は嬉しさと同じくらい寂しさもあった。
『そうだな、健太郎さんがいなくなるのはな・・・』怜雄も寂しい気持ちを感じていた。
『怜雄さん、火曜日以外はどうせ暇なんだから、あの店を継いだらどうですか?』茜は笑ってそう言った。
『あっそっか!そういう手もあったか!って、そんな事できるわけないだろ!』怜雄も笑顔で答えた。
『なんだつまんない。』茜はちょっとガッカリした。
そんな楽しそうに会話をする2人の姿を、少し離れた路上に停車してある黒い車の中の後部座席から見ていたのは、茜の父の南條卓と、怜雄の競馬仲間の馬場勝一だった。
~to be continue~
さあ、いかがでしたか今回の『アフスタ』は
怜雄は夏稀が抱える「心の悩み」を見事に解決し、その結果、健太郎は夏稀と共にイタリアに行く事を決意しました。しかし、怜雄に迫る出来事をまだ怜雄は知りません
。いよいよ、次週は最終回です
「最終回」ということで、90分拡大版でお送りしますので、どうぞお楽しみに
それでは今日はこのへんで。チャオ(ciao!)
<今日の誕生花> 3月19日
「小海老草」(こえびそう)
花言葉は「ひょうきんな」です。
「小海老草」はキツネノマゴ科の半耐寒性常緑低木で、メキシコを原産地とします。赤い小海老が枝にしがみついているような事から、和名を「小海老草」、英名を「シュリンプ・プラント」と呼びます。長期間に渡り花が咲くので、鉢植えの観賞植物や切り花として人気があります。
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