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2012年2月27日 (月)

『アフタースタイル』~カット7~

こんばんにゃ~night 北の猫男爵ですcat

いや~参りましたbearing。またしても十勝地方を襲ったドカ雪snowに今日も僕は大忙しでしたwobbly。それでも豪雪地帯の事を思えば、これぐらいの雪はたいした事はありませんが、本当に雪にはもううんざりですgawk

今日は疲れたので早めに就寝sleepyしようと思いますが、今日のブログは「月曜日」ですから「月9」に対抗したお馴染みの「連続ブログ小説」をお送りしたいと思いますhappy01

週末にかけての大雪で、原稿pencilが間に合うかどうか凄く心配していましたが、作者(僕)が何とか必死に間に合わせましたsweat01。それでは連続ブログ小説『アフスタ』の第7話をどうぞ楽しんで下さいpaper

『アフタースタイル』 脚本・演出:猫男爵

<CAST>

大澤怜雄:滝沢秀明

町村真奈美:加藤あい

南條茜:綾瀬はるか

望月龍平:小栗 旬

町村功治:渡辺いっけい

町村由紀:岡江久美子

藤堂弥生:天海祐希

上田達也:妻夫木聡

大澤すみれ:菅野美穂

小峰健太郎:竹野内豊

馬場勝一:橋爪 功

長岡みどり:篠原涼子(ゲスト出演)

長岡渉:萩原聖人(ゲスト出演)

※この「連続ブログ小説」はフィクションであり、登場する人物・名称等は全て架空であり、実在しません。

☆カット7☆ 記憶を失くした女

<前回までのあらすじ>

幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父と同じ美容師の道を志した主人公の大澤怜雄は、天性の才能を活かし、都内有名美容室「アクア」のNO・2にまで昇りつめる。しかし怜雄は突然「アクア」を辞めて、両親が経営していた美容室を再開させる事にした。

縁があってアシスタントとして南條茜を雇う事になった怜雄のもとには、なぜか様々な「心の悩み」を抱えた客が訪れる。怜雄は髪を切りながらも、客が心から笑って帰る事ができるように、「心の悩み」を見事に解決していく。

そんな中、怜雄に会うために「アクア」のオーナーである藤堂弥生が喫茶店「ケンタロウ」を訪れていた。

喫茶店「ケンタロウ」では、都内有名美容室「アクア」のオーナー藤堂弥生大澤怜雄が訪れるのを待っていた。

『あの・・・今日はもう怜雄は来ないかもしれませんよ。』店主の小峰健太郎は口を開いた。

『まだこの店、閉店の時間じゃないでしょ?』藤堂はそう答えた。

『まあそうですけど、もう3時間も待ってますよ、コーヒー1杯cafeで・・・』健太郎は言いにくそうに話した。

『何か問題でもあるの?』藤堂は強い口調で言った。

『いえ、そういうわけでは・・・』健太郎は渋い顔をした。

その時、店の扉が開く音がしたdoor

藤堂も健太郎もそれが怜雄だと思い扉の方を見つめた。しかし、入ってきたのは「janus」の隣りで本屋を営む町村功治町村由紀の夫婦だった。

『マスター、コーヒー2つ!俺はアメリカンでね。』店の中の雰囲気を知らない功治は、陽気なテンションでそう言いながら入ってきた。

『あの・・・おじさん。』健太郎は藤堂の存在を気づかせようと合図を送ったが、功治は全く気づく素振りもなかった。

『マスター、私はブラックでね。』同じく由紀も藤堂の存在にはまだ気づいていなかった。

『今日はさ、店を早く閉めて2人で久しぶりに映画movieを観てきたんだよね。楽しかったな~それで久しぶりに2人でマスターの顔を見に行こうっていう事になってね。』功治は陽気に健太郎に話しかけた。

『あのさ、後ろの人、怜雄に会いに来たんだけど、もう3時間も待っているんだ。』健太郎は藤堂に聞こえないように、カウンターに座る功治と由紀に小声でそう教えた。

それを聞いた2人は、ふり向いてすぐにまた前を向いた。

『誰だろ?怜雄のヤツ、年上に興味あったのかな・・・』功治は苦笑いを浮かべてそう言った。

『違うでしょ。』由紀は功治の話しを否定した。

『俺もそう思います。きっと仕事関係の人じゃないかと?』健太郎は2人にそう言った。

その時、再び店の扉が開く音がしたdoor

藤堂の視線はその扉の方に向けられた。そしてその視線の先には怜雄の姿があった。

アシスタントの南條茜と一緒に店に入ってきた怜雄は、真っ先にマスターのいるカウンターの方へ向かった。

『あれ、おじさんとおばさん、珍しいねここに2人で来るなんて?』怜雄は功治と由紀にそう言った。

『まあね。』功治はそっけのない返事をした。

怜雄は不思議そうに首を傾げた。

『怜雄、さっきからお前に会いたっていうお客さんが待っているぞ。』健太郎はそう言うと、藤堂がいる方に視線を送った。

怜雄はその健太郎の視線の方に目を向けた。そして次の瞬間、『オーナー!』怜雄はそう声をあげた。

『オーナー?』健太郎も功治も由紀も、3人とも口を揃えてそう言った。

怜雄は藤堂のいる席に腰をかけた。

『オーナーどうしたんですか俺に何か用ですか?』怜雄は藤堂に尋ねた。

『大澤、久しぶりね、何年ぶりかしらね、元気そうね。』藤堂はそう口を開いた。

『ええまあ、どうしたんですかオーナーがわざわざこんな所で俺を待っているなんて?』怜雄は藤堂に尋ねた。

『単刀直入に言うは、あなたに「アクア」に戻ってきて欲しいの!』藤堂は真剣な眼差しで怜雄に言った。

その時、またしてもお店の扉が開きdoor、怜雄の幼なじみで隣りの本屋の娘である町村真奈美が入ってきた。

『やっぱりここにいた、2人ともどうしたのこんな遅くに?』真奈美は功治と由紀にそう話しかけた。

『真奈美、しっー!!』由紀は口の前に人差し指を差し出しながら合図した。

『俺が「アクア」に?どういうことですかオーナー?』怜雄は困惑した顔で尋ねた。

『えっ?怜雄が「アクア」に?どういうこと?』真奈美は何が何だか分からない顔をした。

『真奈美ちゃん、しっー!!』今度は健太郎にも真奈美は由紀と同じ事ことを言われた。

『実はね、上田が店を辞める事になりそうなの、ちょっと色々とあってね。私はずっとあなたが辞めて行った事を後悔していたわ・・・でも、どうしても「アクア」をこのまま終わらせるわけにはいかないの!私の力になって欲しいの・・・』藤堂は熱い感情をむき出しにして怜雄に訴えかけた。

『オーナー・・・・』怜雄は言葉に詰まった。

翌日、怜雄は競馬場にいたhorse

昨日の藤堂の言葉が耳earに残り、どうしても気持ちが集中できずにいた。そんな怜雄に言葉をかけたのは、競馬仲間の馬場勝一だった。

『どうした小僧、何か悩み事でもあるのか?』勝一は怜雄に話しかけた。

『馬場のじっちゃん・・・いやちょっとね。』怜雄の顔には笑顔がなかった。

その怜雄の顔を勝一はじっと見つめていた。

その頃、真奈美は勤務する出版社にいた。

『町村さん、ちょっといいかな。』上司の大澤すみれが真奈美に話しかけてきた。

『何でしょうかチーフ。』真奈美はすみれに尋ねた。

『この前の「アクア」の上田の取材だけど、もう一度お願いできるかな。今度は将来像とか夢とかそんなテーマでいってみてくれない?』すみれはそう真奈美に頼んだ。

『は、はい、わかりました・・・』真奈美は少し戸惑いながらも了解した。

数日後の火曜日、「janus」では来店するお客を迎えるために、店内では準備が進められていた。そこへやってきたのは、怜雄の友人の望月龍平だった。

『おはよう、茜ちゃん!』龍平は明るく茜に声をかけた。

『あっ、龍平さん、おはようございます。』茜は丁寧にその声に返事をした。

『あれ、怜雄は?』龍平は店内を見渡してそう言った。

『今ちょっと買い物に出掛けていますけど、もうすぐ帰ってくると思いますよ。』茜はそう笑顔で答えた。

『そうか。』龍平は小さく呟いた。

『それより龍平さん、私、龍平さんの事を誤解していました。この前、怜雄さんから龍平さんの昔の話しを聞いたんです。何か私、龍平さんに酷い事ばかり言ってごめんなさい。』茜は申し訳なさそうに話した。

『いいんだよ、そんな茜ちゃんが謝る事はないよ、その時は知らなかったんだから。その代わりに今度、合コンでもセッティングしてよ。』龍平はそう言いながら笑ってみせた。

『合コンですか・・・』茜は困った顔をした。

『冗談だよ、冗談、もうマジメなんだから茜ちゃんは。』龍平は笑顔でそう言った。

その時、怜雄が戻ってきたdoor

『おう、怜雄。』龍平はすぐに怜雄に声をかけた。

『何だよまた来たのかよ。』怜雄はうっとうしいように龍平にそう言った。

『そんな言い方はないだろ、例のモノを持ってきたのによ。』龍平は怜雄の顔を見ながら言った。

『そうか、悪いな。』怜雄は急に嬉しそうな顔になった。

『じゃあ、俺はこれで帰るよ、またね茜ちゃん。』怜雄に何かを渡すと龍平は店を出ていった。

すると、すぐにまた扉が開きdoor、龍平が扉から顔を出した。

『忘れ物ですか龍平さん?』茜は龍平に尋ねた。

『いや・・・お客さんなんだけどさ、ちょっと様子が・・・』龍平は困惑した表情を浮かべた。

『えっ?』茜は意味がわからなかった。

『こっちですよ、どうぞ入って下さい。』龍平は優しい声でそのお客を店内に案内した。

龍平のあとに続いて店に入ってきたのは1人の女性だったshadow

『予約していた者なんですけど。』その声の主は長岡みどりという女性だった。

『あっ!いらっしゃいませ、長岡みどりさんですね?』怜雄が店の奥から出てきてそう声をかけた。

『は、はい、たぶん私が、長岡みどりだと思います。』みどりは首を傾げながら自信無さ気にそう呟いた。

『たぶん?まあ、とりあえずこちらへどうぞ。』怜雄は不思議そうな顔をしながら、みどりを店内に案内した。

その頃、真奈美は「アクア」のカリスマ美容師上田達也と都内の喫茶店cafeで会っていた。

『すみません、折角のお休みに。でも取材を受けていただいて嬉しかったです。』真奈美は上田にそう声をかけた。

『あんたには“借り”があるからな。この前の記事pencilのおかげで、俺の知名度は更に上がったよ。実はさ俺、「ラッシュピース」で働くことになるかもしれないんだ。』上田は自慢げにそう言った。

『えっ?「ラッシュピース」って、あの「ラッシュピース」ですか?』真奈美は思わず驚いた顔を見せた。

『そうなんだよ、凄いだろ。』上田は前のめりになって、真奈美にそう言った。

『そうか、それで藤堂さんは怜雄を・・・』真奈美は思い出すように呟いた。

『オーナーが怜雄をどうしたんだよ?』真奈美のその言葉に上田はすぐに反応した。

『いえ、別に・・・』真奈美は口を濁した。

『何だよ、教えろよ!』上田は強い口調でそう言いながら真奈美を睨んだ。

『実は・・・』真奈美はそのすごみに負けて、仕方なく口を開いた。

一方、「janus」では長岡みどりを椅子に座らせ、髪を切る準備ができたところだった。

『それでは長岡さん、え~と、みどりさんって呼んでもいいですか?』怜雄はみどりに問いかけた。

『私の名前は、そういう名前なんですね。』みどりは、おかしな返事をした。

『ええ、そうですよ、あなたの名前は長岡みどりさんですよ。ですから今日は、みどりさんと呼ばせてもらいますね。』怜雄は椅子に腰をかけるみどりに優しくそう語りかけた。

『はい。』みどりは小さくうなずいた。

怜雄の後方では、茜と龍平がその2人の会話の様子をうかがっていた。

『名前がわからないって、どういう事なんですかね?』茜が小声で龍平に尋ねた。

『きっと、記憶喪失か何かだろ・・・』龍平は茜にそう答えた。

『おい龍平、用事ないんだったらさっさと帰れよ。』怜雄は、そんな龍平の姿に気づきそう声をあげた。

『はいはい、分かりましたよ。じゃあね、茜ちゃん。』龍平は茜の方を向いてそう言った。

『はい、また来てくださいね。』茜は笑顔で龍平にそう言った。

『それではみどりさん、今日はどのように致しますか。』怜雄は鏡越しにみどりに話しかけた。

『す、少し短めにカットしてもらえますか・・・』みどりは、はっきりとしない口調でそう答えた。

『わかりました。』怜雄は微笑みながら答えた。そしてすぐに茜にこう言った。『茜ちゃん、バイアス用のシザース持ってきて。』

『はい、わかりました。』茜は怜雄の言葉に返事をした。

『みどりさん、いつ頃から記憶が無いんですか?』怜雄は唐突にみどりに尋ねた。

『それが・・・私にもわからないんです・・・私が唯一知っているのは夫がいる事、彼と結婚した事とだけはしっかりと憶えています。でも、それ以外はほとんど何も憶えていないんです。』みどりはやや下を向きながらそう答えた。

『旦那さんは、みどりさんに何とおっしゃっているんですか?』怜雄はみどりにそう質問を投げかけた。

『無理に記憶を思い出さなくてもいい、私がいるだけで自分は幸せだとそう言っています。』みどりは怜雄にそう答えた。

『みどりさんは、ご主人と出会う前の記憶で何か憶えている事は本当に無いんですか?』怜雄はさらにつっこんでそう聞いた。

『1つだけ憶えています、たぶん私は料理に関係する仕事をしていたんだと思います。キッチンに立つと、自然と手が動くので・・・』みどりは少しだけ頭は押さえながらそう答えた。

『そうですか、料理人だったんですか。例えばどんなものが得意なんですか?』怜雄は髪を切りながら質問を続けた。

『そうですね、パスタとかハンバーグとか、あとオムライスとか、洋風のものが多いかと思います!』みどりは少しイキイキとしながらそう答えた。

そんな話しをしてたら、怜雄の後方でグッーとお腹が鳴る音がした。

『すみません、朝ご飯抜いてきたので、話を聞いていたら、ついお腹が鳴ってしまって・・・』その声の主は茜だった。

『そうだ、みどりさん!カットは一旦中断して、料理を作ってもらえませんか?』怜雄はとんでもないお願いをみどりにした。

『えっ?料理を?』みどりは驚いた表情をした。

『ええ、うちのアシスタントがお腹を減らしているものですから。もちろん、タダでとは言いません、カット代を安くさせていただきますから。ねっ、お願いしますよ!』怜雄は明るく、みどりにそうお願いをした。

『かまいませんけど・・・』少し戸惑いながらも、みどりは怜雄にそう返事をした。

早速、怜雄はお店の中から繋がっている自宅のキッチンへとみどりを案内した。

『ここがキッチンです、どうぞ使って下さい。材料は冷蔵庫にありますから。』怜雄はみどりにそう言った。

『では、使わせてもらいますね。』そう言いながら食材を選び、そして料理を作り出したみどりの顔には、先程までの精気のない表情とは少しだけ笑みが浮かんでいた。

その頃、上田は藤堂に会うために、定休日の「アクア」のオーナー室を訪れていた。

『オーナー!どういうことですか?怜雄をここに戻すって!』上田は激高していた。

『早いわね、もうそのこと知っているのね。』藤堂は平然とそう答えた。

『どういうことですか、答えて下さいよ。』上田は再び藤堂に詰め寄った。

『当然でしょ、あなたが抜けたらその穴を埋めなきゃならない。経営者としてそう考えるのは当たり前でしょ。』藤堂は椅子に座りながら、上田の目を見つめてそう話した。

『でもあいつは、自分でここを辞めていったんですよ、どうしてオーナーが頭を下げてまでして、引き戻さなければならないんですか!』上田は怒鳴るように藤堂に言った。

『それをあなたに話す必要はないわ!帰りなさい!』藤堂は激高する上田を一喝した。

そして「janus」では、みどりが作った料理が出来上がり、美味しい匂いが家の中に広がっていた。

『はい、できたわよ。』みどりは笑顔で2人の前に自慢の料理を出した。

『美味しそうなオムライス!』茜は満面の笑みを浮かべた。

『オムライスか懐かしいな~』怜雄も顔が思わずほころんだ。

『さあ、どうぞ食べてください。』みどりは、とてもイキイキとした表情だった。

『うわ~美味しい!』オムライスを口に運んだ茜は、大きな声でそう叫んだ。

『本当だ凄い美味しい!思い出すな、母さんが作ってくれたオムライス・・・』怜雄は目を瞑りながらそう言った。

『オムライスに何か思い出でもあるんですか?』茜が怜雄に問いかけた。

『子供の頃さ、俺が悪さをして親父に怒られると、いつも母さんがオムライスを作ってくれたんだ。俺が美味しそうに食べるのを見ながら、母さんはいつもニコニコ笑いながら俺のことを見ていた。』怜雄はその当時のことを懐かしむかのように語りだした。

『じゃ、怜雄さんにとってはオムライスはお袋の味なんですね。』茜は笑顔でそう言った。

『まあ、そんなところかな。』怜雄は何だか嬉しそうだった。

怜雄がそんな思い出を語っていると、急にみどりの様子に異変が起きた!

『痛い、頭が痛い・・・』頭を押さえながら苦しそうな表情をみどりはした。

『どうしたんですか!大丈夫ですか!』そう怜雄が声を上げる中、みどりは痛む頭を押さえながらも、目の前で幻覚を見ていた。

『お母さんのオムライス、美味しいね。』そう言いながら笑っている女の子の姿がそこにはあった。

『子供?女の子?』みどりは呟いた。

『あら、明日香ったら、お口にケチャップ付いてるわよ。』幻覚の中で女の子の口を拭っているのは、みどり自身だった。

『あすか?あ、あすか・・・』みどりはその女の子の名前を呟いていた。

『あすか?誰のことですか?』怜雄は頭を押さえて苦しむみどりに話しかけた。

『いや~!明日香、死なないで!』みどりは突然、大きな声でそう叫んだ。

『・・・・・』怜雄も茜もあまりに突然の出来事に言葉が出なかった。

そして怜雄が我に返り、みどりに尋ねた。『何か思い出したんですね!』

『・・・・・』しかし、みどりには返事をする余裕がなかった。

『しっかりして下さい、みどりさん!』怜雄が大きな声でみどりに呼びかけた。

『明日香は、もういない・・・死んだの・・・』そう小声で呟くと、みどりは思い出した過去の出来事を話し出した。

『明日香は私の一人娘の名前です。明日香は学校の帰り道、道路に飛び出して車にひかれて死んだの・・・それからの私はその現実を受け止める事ができなくなって、抜け殻のようにただ落ち込んでいたわ。』みどりは辛い過去を思い出しながら、ゆっくりとゆっくりと話した。

『主人はそんな私に仕事に出る事を勧めてくれて、私は以前働いていたレストランでまた働かせてもらう事になったの。でもしばらくして、レストランを訪れる家族連れを見ているうちに、私は絶望感と孤独感に襲われて、気がついた時は病院でした。』ぐったりと座り込みながら話すみどりの目には、うっすらと涙が溢れていた。

『目を覚ました私の記憶はほとんどが消えていて、最初は自分の存在すらも理解できませんでした。でも主人が、いつも側で私を支えてくれたんです。』みどりの顔が少し穏やかになった。

『そうでしたか、お子さんを亡くして、そのショックが原因で記憶を失ってしまったんですね。その気持ちは凄く分かりますよ。』怜雄は噛み締めるように、みどりにそう言った。

『わかる?何が?記憶を失った事が?子供を亡くした事が?あなたに何がわかるのよ!わかったこと言わないでよ!』少し穏やかになっていたみどりが、怒りを込み上げるように怜雄にそう言った。

『・・・・・』怜雄は思わず下を向いた。

『みどりさん、それは違います!怜雄さんもその気持ちは痛い程わかるんです!だって、怜雄さんはご両親を交通事故で亡くしているんですから、その時、怜雄さんは8歳だったんですよ!良い大人が甘えた事を言わないで下さい!』みどりの言葉に対して、茜が思わずそう言い返した。

『やめるんだ茜ちゃん、いいんだ俺の事は。』怜雄は茜にそう言った。

『えっ・・・そんな、そんな事とは知らずにゴメンなさい。』みどりは、冷静さを取り戻した。

『いいんですよ、みどりさんが謝る事じゃない。あなたはずっと辛い想いに耐えてきたんだ、でもその辛さから無意識のうちに逃避しただけの事ですよ。』怜雄はみどりを攻めることなく、微笑みながらそう話した。

『逃避?』怜雄の言葉にみどりは思わず耳を傾けた。

『そうです、今あなはには現実と立ち向かえるだけの勇気と未来があるはずだ。だからこそ、今ここで記憶を蘇らせて、そして現実の世界に戻ってきた。これからは、ご主人と2人で新しい未来を作っていけばいいんですよ。』怜雄はみどりにそう語りかけた。

『未来を作る・・・』みどりは小さく呟いた。

『そうです、その未来の世界にはもちろん明日香ちゃんも心の中で一緒に生きていますよ。だから心配する事なんてないんですよ。』怜雄はみどりの背中に手を当てながらそう話した。

『僕の心の中にも、父と母はしっかりと生きています。そして今も3人で一緒に未来を作っているんです。だから、あなたにもそれはできるはずだ。』怜雄はみどりの顔を見ながら優しく話した。

『約束してくれませんか?必ず立ち直ってみせると。』怜雄は真剣な顔でみどりを見つめた。

『怜雄さんでいいのかしら、ありがとう、本当にありがとう、何か自信が持てたわ。約束する、必ず立ち直ってみせるわ。』みどりは涙を拭いながら、そう怜雄に言った。

『良かった、その言葉を聞いて安心しました。さあ、食事を済ませて、カットの続きをしますよ。』怜雄は笑顔でそう言った。

食事を終え、カットも終わったみどりは会計を済ませていた。

『ありがとう、本当に記憶が戻って、何もかもがすっきりしました。』みどりの顔には笑顔が溢れていた。

その時、扉が開きdoor店に入ってきたのは、みどりの夫の長岡渉だった。

『あの、すみません、こちらに長岡みど、おい、みどり!』店を覗き、すぐにみどりを発見した渉はそう声をあげた。

『渉、迎えに来てくれたの?』みどりは渉に言った。

『何言っているんだよ、家に帰ったら、ここの住所が書かれたメモが置いてあったから急いで来たんだ。』渉は息を切らしながらそう言った。

『大丈夫ですよ、みどりさんは、もう大丈夫です。』怜雄は渉にそう話した。

『えっ?どういうことですか?』渉はその言葉の意味がわからなかった。

そして、怜雄は全てを渉に話した。

『今日は本当にありがとうございました。あなたは本当にみどりの命の恩人だ、今度改めて御礼に伺わせてもらいます。』渉は深々と怜雄に頭を下げた。

『そんな御礼なんてされるような事は何もしてませんよ。渉さん、みどりさんをしっかり支えて下さいね。』怜雄は渉にそう言った。

『はい、わかりました。よし、みどり行こう、今日からが俺達のもう1つの新しい人生のスタートだよ。』渉はそうみどりに声をかけた。

『そうね、2人で頑張りましょう。』みどりも渡るの言葉にそう答えた。

『何か不思議ですね、つい数時間前にここを訪れた人とはまるで別人の顔をしていますね。』茜は肩を寄せて帰る渉とみどりの姿を見ながら、怜雄にそう話しかけた。

『そうだな、でも、笑ってお店をあとにしてもらう、それが俺の仕事だから、それが「janus」だから。』怜雄は誇らしげにそう話した。

『そうですね。』茜も同じ気持ちだった。

『よし、後片付けするよ茜ちゃん!』怜雄は笑ってそう言った。

数日後、怜雄は両親のお墓参りをするために墓地に来ていた。

怜雄が墓前で手を合わせていると、姉のすみれがやってきた。

『姉ちゃん。』そのすみれに気づいた怜雄が呟いた。

『ちゃんと憶えていたのね、今日は命日だもね。』すみれは怜雄に話しかけた。

『当たり前だろ、いつも姉ちゃんに先を越されるから、今年は朝イチで来たよ。』怜雄は笑ってそう言った。

すみれも両親のお墓に手を合わせた。

『怜雄、あんた「アクア」にまた誘われているんだって?』手を合わせながら、すみれは怜雄に尋ねた。

『何だよ、地獄耳だな姉ちゃんは。あっ、真奈美か・・・』怜雄は苦笑いを浮かべた。

『で、どうするの?戻るの?』すみれは怜雄の顔を見ずにそう尋ねた。

『正直、迷っていた。俺は別にあの店が嫌で辞めたわけじゃないし、オーナーから直々に頼まれると、凄く心が揺れ動いたよ。でも俺にはあの店がある、親父や母さんが守ってきたあのお店、あのお店にいるとさ、不思議に色々と教えられる事があるんだよ。自分でも信じられないんだけど、どんどん自分に自信と勇気が持てるんだ。だから、俺はあの店を「janus」を続けるよ、それが俺が作るべき未来だから。』怜雄は自信に満ち溢れた表情ですみれにそう答えた。

『そっか、その言葉聞いて安心したよ。何かデキの良い弟を持つと、嬉しいね。』すみれは凄く晴れやかな表情を浮かべた。

『何言ってるんだよ、そんなこと今まで一度も言った事ないくせに。』怜雄はふざけてみせた。

『本当だよ、本気で言ってるんだから!だから今日、何かご飯ご馳走して。』すみれは、笑顔で怜雄にそう言った。

『何だよそれ。』怜雄の顔にも笑顔が溢れていた。

2人は笑いながら墓地をあとにした、その光景を天国にいる両親が優しく見守っている事を怜雄もすみれも、しっかりと感じていた。

その夜、「アクア」のオーナー室で椅子に腰をかける藤堂の携帯電話が鳴ったmobilephone

その電話の相手は怜雄だった。

『はい、もしもし藤堂です。』藤堂はやや低いトーンで電話に出た。

『大澤です。』怜雄の真剣な声がそこにはあった。

『大澤、答えは出たかしら。』藤堂は怜雄に尋ねた。

『はい、出ました。せっかくのお誘いですが、お断りします。俺には「janus」が一番大切ですから。』怜雄の言葉には熱く重い気持ちがぎっしりと詰まっていた。

『そう、もうその気持ちは変わらないのね?』藤堂はもう一度、怜雄に問いかけた。

『はい、変わりません。』怜雄は電話越しに力強く答えた。

『わかったわ。』藤堂はそう言うと、電話を切った。

藤堂は自分の拳を強く握りしめ、こみあげてくる怒りを必死に抑えていた。

~to be continue~

さあ、いかがでしたか今回の『アフスタ』はpaperストーリーのカギを握る藤堂が、影で色々な動きを見せる中、この後どのような展開が待っているのでしょうかhappy02。いよいよ物語りは終盤に差し掛かりクライマックスが徐々に近づいてきますgood。今後の展開に目が離せませんので、次回の「第8話」も乞うご期待ですsign03

それでは今日はこのへんで。チャオ(ciao!)

<今日の誕生花> 2月27日

0227

「サキシフラガ」

花言葉は「活力」です。

「サキシフラガ」はユキノシタ科の可愛い花を一面に咲かせる山草です。葉には不規則なクリーム色の美しい斑が入り、晩春から初夏にかけて白い花を咲かせます。一見、繊細に見えますが、根が岩を割って生きる程、丈夫な植物です。

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