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2012年2月20日 (月)

『アフタースタイル』~カット6~

こんばんにゃ~night 北の猫男爵ですcat

早いもので2月も終盤へと差し掛かってきましたねconfident。今年の冬は暖かい日が少なく、いまだに朝は氷点下20℃近い寒さに、体を震わせていますsad

寒いとどうしても家houseにいる時間が多くなりますが、皆さんもご存知の通り僕はテレビドラマtvが大好きなので、特に冬は「ドラマ三昧」になってしまいますcoldsweats01

今クールは竹内結子主演の『ストロベリーナイト』が一番好きなドラマで、毎週火曜日の放送を楽しみにしていますhappy01

今日は月曜日ですから、「月9」の『ラッキーセブン』を見ることにしますが、それに負けないように、例のあの「連続ブログ小説」を今日もお送りしたいと思いますpaper

今日も作者(僕)が、何とか原稿を締め切りに間に合わせてくれましたのでpencil、予定通りにお送りすることにしますgood

それでは連続ブログ小説『アフスタ』の第6話を早速見てみましょうhappy01

『アフタースタイル』 脚本・演出:猫男爵

<CAST>

大澤怜雄:滝沢秀明

町村真奈美:加藤あい

南條茜:綾瀬はるか

望月龍平:小栗  旬

町村功治:渡辺いっけい

町村由紀:岡江久美子

藤堂弥生:天海祐希

上田達也:妻夫木聡

大澤すみれ:菅野美穂

小峰健太郎:竹野内豊

馬場勝一:橋爪  功

野中隼人:松坂桃李(ゲスト出演)

丸山彩香:藤本  泉(ゲスト出演)

実松裕司:香川照之(友情出演)

※この「連続ブログ小説」はフィクションであり、登場する人物・名称等は全て架空のもので実在しません。

☆カット6☆ 殴れない男

<前回までのあらすじ>

幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父と同じ美容師の道を志した主人公の大澤怜雄は、その天性の才能を活かし、都内有名美容室「アクア」のNO・2にまでのぼりつめた。しかし、怜雄は突然「アクア」を辞めて、両親が経営していた美容室を再開させる事にした。

縁があってアシスタントとして南條茜を雇う事になった怜雄のもとには、なぜか様々な「心の悩み」を抱えたお客が訪れる。怜雄は髪を切りながらも、お客が心から笑って帰る事ができるように、お客の「心の悩み」を見事に解決していく。

そんな怜雄のもとに、今日もまたお客が訪れようとしている。

都内の某所にある大澤怜雄が経営する美容室「janus」の隣りには、怜雄の幼なじみの町村真奈美の父親である町村功治が経営する本屋があった。その日も町村家は、いつものように騒がしい朝を迎えていた。

『真奈美、早く行かないと仕事遅れるわよ!』真奈美の母親の町村由紀の声が聞こえた。

『わかってるわよ、もう!私が朝は苦手なの知ってるでしょ。』真奈美は少し怒りながら答えた。

『これじゃ、お嫁に行っても苦労するな・・・』功治は小声で呟いた。

『えっ?何っ?』真奈美は少し苛立った口調で功治に尋ねた。

『いや何でもない。ところで真奈美、お前、怜雄とは仲良くやってるか?』功治は探るように真奈美に聞いた。

『仲良くって?普通だけどどうかした?』真奈美は不思議そうに首を傾げた。

『いや別に何でもないけど、怜雄は何も言ってなかったか?』功治はまた探るように尋ねた。

『別に何も聞いてないけど・・・何なの?』真奈美は眉間にしわを寄せた。

『いや何でもないんだ、なあ母さん。』功治は由紀に助けを求めた。

『え、ええ・・・』由紀は思わず言葉に詰まってしまった。

『何かおかしい、何を2人で隠してるの?教えなさいよ!』真奈美は2人に詰め寄った。

『だから何でもないって。』功治は必死にそう答えた。

その時、お店の前を通り掛かったのは怜雄の姉の大澤すみれだった。

『あれ、チーフどうしたんですか?』すみれの事に真っ先に気づいたのは真奈美だった。

『おはよう真奈美ちゃん、ちょっと怜雄の顔でも見てから仕事へ行こうと思ってね。』すみれは少し微笑みながら答えた。

『そうですか。』真奈美は少し不思議そうな顔をした。

『おじさんも、おばあさんも元気ですか?』すみれは功治と由紀に声をかけた。

『俺達はこの通りピンピンしているよ、それより真奈美がいつも世話になってすまんな、すみれちゃん。』功治はすみれに優しく語りかけた。

『いえ、とんでもないですよ、こちらこそ真奈美ちゃんに助けてもらっています。』すみれは功治にそう答えた。

『お世辞でも嬉しいよ、そんな事を言ってくれて。』功治はすみれに御礼を言った。

『すみれちゃんも元気そうね。』由紀が遅れてすみれに話しかけた。

『おばさんも相変わらず若いね。』すみれは笑顔で由紀に声をかけた。

『そんな事ないわよ、もうすっかり歳を取ってしまって。すみれちゃんも、たまには家に遊びに来てね。』由紀はすみれにそう言った。

『はい、わかりました。それじゃ失礼しますね。』すみれは微笑みながら3人の前をあとにした。

すみれは程なくして「janus」に着き、玄関の前に立ち、チャイムを鳴らしたbell

少し時間をおいてから扉が開いたdoor

『あれ?姉ちゃん!どうしたのこんなに朝早くに。』開いた扉から出てきたのは怜雄だった。

『ちょっと近くに朝から行く用事があったから。それより怜雄、何か前のお店で働いていた時よりも顔がイキイキしてるね。』すみれは扉を閉めてお店の中に入り、そして怜雄の顔を見ながらそう言った。

『姉ちゃんこそ仕事頑張ってるみたいだな、見たよ雑誌。』怜雄はそう言った。

『そんな大した事はしてないけどね。』すみれは少し下を向きながら答えた。

『ありがとうな姉ちゃん、この前、姉ちゃんがバーbarで俺に行った言葉の意味、俺やっとわかったよ。』怜雄は少し恥ずかしそうに言った。

『そうみたいね、その顔を見ればわかるよ。』すみれは微笑んだ。そしてすぐに口を開いた。

『怜雄、万年筆pencilどうもありがとうね、気の利いた事してくれるじゃないの。』すみれはさらに笑顔でそう話した。

『別に大した事じゃないよ、あれは姉ちゃんが持っているべき物だからさ。』怜雄はそう言った。

『でも、龍平君に頼む事は無いんじゃない。』すみれは少しだけ口を尖らせた。

『いや、それはさ・・・』怜雄は困った表情を浮かべた。

『怜雄にも照れくさいとか、そういうのあるんだね。』すみれは笑顔を見せた。

『いいだろそんなの、それよりこんな所で油売っている場合か?仕事遅れるぞ。』怜雄はそう言いながら話しを誤魔化した。

『あっ、本当だ!』すみれは腕時計watchを見ながらそう言った。

その時、お店の扉が開いたdoor

『あれ?えっ?もうお客さん来てたんですか、すみません遅れてしまいました。』そう言いながら入ってきたのは、怜雄のもとでアシスタントとして働く南條茜だった。

『茜ちゃん違うよ、この人は俺の姉貴だよ。』怜雄はすぐにそう答えた。

『えっ?お姉さん?』茜はキョトンとした顔をした。

『はじめまして、あなたが茜さんね、キレイな子ね。』すみれは笑顔で茜に話しかけた。

『そんな、とんでもありません。』茜は照れくさそうに答えた。

『怜雄にコキ使われてない?大丈夫?何かあったらすぐに私に言ってね。怜雄をぶっ飛ばしに来るから。』すみれは冗談を交えて茜に話しかけた。

『姉ちゃん!』怜雄はすみれを睨みつけた。

『冗談、冗談、茜ちゃん本当に何かあったら何でもいいから私に言ってね。』そう言って、すみれは鞄から自分の名刺を取り出して茜に手渡した。

『は、はい!』茜は嬉しそうに答えた。

『それじゃ行くね、またね怜雄。』そう言いながら、すみれは店の扉を開いたdoor

『おう、またな姉ちゃん。』怜雄の顔は嬉しそうだった。

その頃、都内有名美容室「アクア」のオーナー藤堂弥生は、美容師の上田達也を連れてある場所へ来ていた。

『何なんですがオーナー!休みの日に呼び出したかと思えば、いきなり俺をこんな所へ連れてきて。』上田は少し不機嫌だった。

『あなたに紹介したい人がいてね、怒るのはその人に会ってからにして。』藤堂は冷静にそう答えた。

2人が椅子chairに座るその部屋の一室にその時、1人の男が入ってきたshadow

『ゴメン、待たせたな。』声の主であるその男は、藤堂の知り合いの実松裕司という人物だった。

『いいえ、突然お邪魔して申し訳ありません実松さん。』藤堂は丁重に挨拶を交わした。

『お前が直々に来るなんて珍しい事だから、吹っ飛んできたよ。』実松は笑ってそう言った。

『ありがとうございます。』藤堂は頭を下げた。

『で、なんだ用件は?』実松の顔から先程までの笑顔は消えた。

そんな実松の表情を見て藤堂が口を開いた。『彼は私のお店で働く、上田達也と申します。』

藤堂に続き上田も口を開いた。『はじめまして、上田と申します。』

『君の事はよく知っているよ、雑誌でも取り上げられていたし、今凄く人気のある“カリスマ美容師”とか言うやつだろ?』実松は上田の事を見ながらそう言った。

『ええ、まあ・・・』上田は小声で答えた。

『で、そのカリスマ君がどうかしたのか?』実松は藤堂に尋ねた。

『実は、彼を実松さんのお店で雇って貰えないでしょうか?』藤堂は真剣な表情で実松の目を見た。

『うちで?』実松は驚きながら答えた。

『ちょ、ちょっと待って下さい、何を言っているんですかオーナー!俺は何も聞いてないですよ。』上田は藤堂の方を見た。

『あなたには内緒にしていたけど、そろそろあなたは「アクア」を出た方が良いと思ってね。』藤堂は上田にそう言った。

『そんな勝手な・・・』上田はうつむきながら呟いた。

『藤堂、いくら俺とお前の仲でも、世の中には礼儀っていうものがあるぞ。いきなり尋ねてきて、どこの馬の骨か知らん奴を雇ってくれって言われても、それは筋が違わないか?』実松は藤堂にそう投げかけた。

『勿論です、そんな事は重々承知しています、それを承知の上でお願いしているんです。今すぐにとは言いません、時間ならいくらでもお待ちします。でも彼は、上田は「アクア」ではなく、あなたの店「ラッシュピース」に必要な存在だと私は確信しています。』藤堂は少し強い口調でそう実松に訴えかけた。

『ラッシュピースって・・・』上田はその言葉に反応した。

『そうか・・・良しわかった、お前がそこまで自信をもって推薦するなら、ちょっと考える時間を俺にくれ。』実松は少し考えたのちに、藤堂にそう返事をした。

『はい、ありがとうございます。』藤堂は喜んだように頭を下げたが、その顔には何かを企んでいるような表情が見えた。

『じゃあ、俺は時間ないから退席させてもらうよ、悪いな。』実松はそう言い残し、部屋を後にした。

『オーナー!どういう事ですか!「ラッシュピース」って、あの世界的に有名な美容室の「ラッシュピース」の事ですよね?』上田はすぐに藤堂に質問を投げかけた。

『そうよ、彼はそのお店のオーナー実松裕司よ。』藤堂はそう答えた。

『俺がそこで働けるんですか?』上田は気持ちが早っていた。

『そういう事よ、あなたも「アクア」で骨を埋める気はないでしょ?』そう上田に話す藤堂の目は何か異様な感じだった。

その頃、「janus」ではお客が訪れ、店の扉が開いたdoor

『いらっしゃいませ。』いつものように怜雄がお客を迎え入れた。

『あっ、予約してたんだけど。』やや荒い口調で、そう言いながらお店に入ってきたのは、野中隼人という茶髪にピアスをした若者だった。

『野中隼人さんですね、どうぞこちらへ。』怜雄は野中を店内に案内した。

『今日はどのように致しましょう。』野中を椅子に座らせた怜雄は、野中に言葉をかけた。

『髪を染めてくれ、なるべく明るく派手な感じで。あと、伸びているところを適当にカットして。』野中はぶっきら棒な口調でそう言った。

『承知しました。』怜雄はそんな野中の言葉にも丁寧に対応した。

『ここ、煙草吸ってもいいの?』野中はそう尋ねてきた。

『申し訳ありませんが、うちは禁煙なのでご遠慮願いますか。』怜雄は野中にそう答えた。

『チェッ!』野中は面白くなさそうに舌打ちをした。

その時、後ろで2人の会話のやり取りを聞いていた茜が怜雄の服の袖を引っ張り、奥に連れて行きこう言った。『怜雄さん、何かあの人、凄い怖い感じで嫌なんですけど・・・』

『大丈夫だよ、何もしないよ、彼はただのお客さんだよ。』怜雄は笑顔で茜にそう言った。

『おい、何をごちゃごちゃ喋ってるんだよ、早くやれよ!』野中は強い口調で怒鳴った。

『申し訳ありません、今すぐに準備しますので。』怜雄は丁寧に返答した。

カラーリングの準備をしながら怜雄は、椅子に座っている野中に鏡越しに話しかけた。『失礼ですけど野中さんは、何歳なんですか?』

『あっ?何だよ、歳なんか聞いてどうすんだよ、それに名前で呼ぶなよ、馴れ馴れしいな。』野中は不機嫌な感じで答えた。

『すみません、お客さんを名前で呼んでしまうのは、癖なんですよ。』怜雄が苦笑いを浮かべてそう言ってまもなく、野中は小声で呟いた。

『22・・・』

『はい?』思わず怜雄は、その声を聞きなおした。

『だから22だよ、それがどうかしたか?』野中がそう言った。

『そうですか22歳ですか、いえ僕にもね、そんな若い頃があったな~と思って。』怜雄は感慨深げに話した。

『何言ってるんだよ、さっきから変なヤツだな、さっさと仕事しろよ!』野中は少しトーンを抑えながらも怜雄にそう言った。

『申し訳ありませんね、今すぐやりますから。』怜雄は笑顔でそう野中に言った。

数十分後、カラリーングが終わり、怜雄は椅子に座りながら本を読んでいる野中に声をかけた。

『こんな感じでどうでしょうか?』

『はあ?何だよこの色?真っ黒じゃないか!俺は明るくしてくれって言ったんだよ!』野中は間髪入れずに怒鳴った。

『はい、だから明るくしました。』怜雄は優しい口調で返答した。

『お前、舐めてるのか!俺を少年院あがりだと思って!』野中は思わず立ち上がり声を荒げた。

『えっ?野口さんは少年院に入っていたんですか?そうは見えませんでしたけど。』怜雄は冷静にそう答えた。

『お前な、どうしてくれるんだよこの髪!早く染め直せよ!』野中は怜雄に激しい口調で詰め寄った。

『あなたには、わからないかもしれませんけど、あなたにとってはこれが一番明るい色です。心の中はもっと暗い色で沈んでいるから・・・』怜雄は真剣な顔でそう答えた。

『な、何を言っているんだよ、お前?正気か?』野中は心の中を悟られたのを隠す様に、たじろぎながらもそう言った。

『その拳で何を守ろうとしたんですか?もし僕で良かったら、話しを聞きますよ。』怜雄はそう野中に語りかけた。

『・・・・・』野中は下を向き、少しの時間何かを考えていたが、怜雄に対して口を開き始めた。『あんた、人を本気で愛した事はあるか?』

先程までの威勢の良さは消えた野中の問いに、怜雄は答えた『はい、ありますよ。』

『そいつのためなら死ねるか?』野中はさらに問いかけた。

『いえ、それはできません。死んでしまったら、その人を守る事はできないから。』怜雄はそう答えた。

『ふん、そうか、わかった。あんたなら話してもいいよ、きっと俺の気持ちを理解してくれそうだから。』野中の顔が少し穏やかな顔になった。

そして野中は椅子に深く腰を掛け、怜雄に語りかえるように話し出した。

『あれは今から5年前、俺が17歳の時だった・・・』野中は目を瞑り、回想していた。

『俺は当時、ボクシングで日本チャンピオンを目指し、毎日厳しい練習に励んでいた。ジムの社長からは大きな期待をかけられ、日本ランクも徐々に上がっていき、俺の中で本当にぼんやりだけど、日本チャンピオンというものが現実に見えてきた、ちょうどそんな頃に事件は起きたんだ。』

野中は自分の過去を話だした。

『俺には当時、同じ年の彼女がいたんだ。彼女は凄く献身的で、いつも俺を縁の下から支えてくれていた。たまにジムに来て、俺のトレーニングが終わるまで待っていることもあった。でも・・・』

そこで野中は言葉に詰まった。

『どうしたんですか、その彼女と何かあったんですか?』怜雄は優しく問いかけた。

その怜雄の問いに小さくうなずき、少し間をおいて野中は再び話し出した。

『ある日、同じジムでトレーニングしていた俺の同僚が、俺の活躍を嫉み、彼女を・・・彩香を暴行したんだ・・・俺が彩香の姿を見つけた時、彩香は脅えて俺が体に触れる事も拒んだんだ・・・』野中は拳を握りしめながら必死に話した。

『ひどい・・・』怜雄の後ろで話しを聞いていた茜が呟いた。

苦しさに堪えながらも野中は再び話し出した。

『俺はそんな仕打ちを耐える事などできなかった、そいつをボコボコに殴り、気がつくとそいつは死んでいた・・・』野中は少し声を震わせた。

『裁判では、そいつが彩香にした行為の事もあり、俺の気持ちを理解してくれる裁判官もいた、でも人を殺した事は曲げられない事実で、俺は少年院に送られる事になった。』

野中は天を仰ぎ、呼吸を整え、再び怜雄に話し出した。

『少年院でのマジメな態度が認められ、俺は2年半で出てこられた。その時俺は、もう2度と人は殴らない、そう心に決めたんだ。』野中は真剣な眼差しで、鏡越しに怜雄を見つめた。

その目を見て、怜雄が野中に尋ねた。『出所して、彼女には会ったんですか?』

『俺は塀の中にいる間、ずっと彩香の事だけを思っていた。彩香も月に1回は必ず面会に来てくれていたし、少年院を出たら2人で暮らそうと約束もしていた。』野中は当時の事を思い出しながら話した。

『でも、いざ出所すると、俺は彩香に会いに行けなかった・・・俺が世間で認められるのか、彩香は俺といる事で、いつも後ろ指を指されるんじゃないか・・・そう思うと、彩香のもとに行く事ができなかった・・・』野中は再び拳を握りしめたまま下を向き、そしてまた話しだした。

『俺は彩香との約束を破り、彼女に会う事すらせずに、2年もの月日を過ごしてしまったんだ・・・・俺はどうしようもない最低な男だ。』野中は思わず弱音を漏らした。

その時、ずっと黙って話しを聞いていた怜雄が、拳を握りしめて野中に殴りかかった。

『本当にあんたは最低な男だな!』

『バシッ!impact

『痛て~な!何すんだよ!』殴られた野中は怜雄は睨んだ。

『殴り返して来いよ、どうした!』怜雄は野中にそう言った。

『やめて、怜雄さん!』茜が思わず声を荒げた。

『何すんだてよ、てめえ調子に乗るんじゃなねえぞ!』そう言いながら野中は立ち上がり怜雄に詰め寄った。

『・・・・・』しかしそこから野中は動けなかった。

『どうした殴らないのか、来いよ!』怜雄はさらに野中にそう言った。

『できない・・・』野中は拳を握りしめながらそう呟いた。

『どうしてだ?』怜雄が野中に尋ねた。

『できないんだよ人を殴る事が・・・怖いんだ・・・』野中は悲痛な表情になった。

『殴ればまた彩香を1人にしてしまう・・・』

そんな野中に怜雄は話し出した。

『そうだろうな、今のあんたには彩香さんを守る事なで到底できないだろうな。そんな抜け殻のようなヤツには。』怜雄は野中に厳しい言葉をかけた。

『俺は・・・』野中は今にも泣き出しそうになった。

怜雄はそんな野中に再び話しかけた。

『人をただ暴力に任せて殴る事は間違っている、でも、大切なものを守るために、人は時には拳を振り上げなきゃならないこ事もあるんじゃないか?それは拳だけじゃない、心でもできる。本当に大切なものを守るためには、恐怖に負けていてはダメだ!勇気を出して、立ち向かっていかなきゃ!』

怜雄のその熱い言葉に下を向いていた野中は、顔を上げ怜雄の顔を見つめた。

そんな野中に怜雄がまた口を開いた。

『何のために、彩香さんはあんたが出てくるのを待っていたんだ?あんたその事を考えた事はあるか?一番辛かったのは誰だったのかを。あんたが守れないと思っていた彩香さんは、ちゃんとあんたに守られていたし、逆に彩香さんは一生をかけて、あんたを守ろうとしていたんだぞ。わかるか!』怜雄は真剣な顔で声を少し荒げて話した。

『彩香・・・』野中は小さな声で呟いた。

『ほら、俺を殴れよ、髪の色が気に入らないんだろ、殴って俺の心はこんな色じゃないって俺に言って見れよ!』怜雄は激しい口調で言った。

『どうした、来いよ!』

『ちくしょー!』

『バシッ!punch

野中は握った拳を怜雄の顔目掛けて振りかざした。

『殴れたじゃないか、その拳と“ここ”でちゃんと彩香さんを守ってやれよ!』怜雄は野中の胸の辺りを指差し、そう言った。

『あんた、どうしてそこまでして、俺の事を・・・』野中は怜雄に尋ねた。

『目だよ、あんたの目と同じ目をしていたヤツを俺は知っている。そいつは今、俺の一番の親友でね、そいつも17の時、喧嘩に巻き込まれた同級生を守ろうとして、相手が持っていたナイフで誤って相手を刺してしまって、少年院送りになったんだ・・・全く理不尽な話だけど、時には世間というものは、何の罪も無い人にも、そういう仕打ちをする事もある。』怜雄は一言一言、想いを込めてゆっくりと話した。

『そいつは少年院を出てきて美容師を目指したんだ、俺はそこで初めてそいつと出会ったんだけど、その時の目は今のあんたの目とそっくりだった。自分から未来を見ようとしない目をしていた。』

怜雄のその話に茜が思わず声を出した。『それって、龍平さん?』

『ああ、そうだ。』怜雄は茜に答え、そして再び話し出した。『でも、そいつは今、立派に自分の人生を歩んでいるよ、未来を自分で作るためにね。』

『未来を自分で作る?』野中は怜雄の言葉に思わず呟いた。

『そう、あんたにだってそれはできるさ、これからどんな事があってもね。』怜雄は優しく答えた。

『どんな事があっても・・・』野中はその言葉を繰り返し呟き、そして怜雄に尋ねた。『あんた名前は?』

『俺は怜雄、大澤怜雄だ。』

『怜雄さん、あんたに助けられた。俺、彩香に会いに行くよ、彼女が俺の事をどう受け止めてくれるかわからないけど、でもまず俺は彼女に会いに行かなければならない。そうしないと何も始まらない・・・』野中の顔は優しい顔になっていた。

『そうだな、それがまず最初の一歩だな。頑張って行って来いよ。』怜雄は野中の肩を叩いた。

数分後、野中は会計をするためにレジの前に立っていた。

『怜雄さん、あんたの美容師の腕が凄いのかどうかは正直俺にはわからない、でも1つだけ言える、あんたは俺の命の恩人だ、ありがとう。』野中はそう怜雄に話した。

『そんな事を言ってもらえて嬉しいよ、だったらその大切な命、幸せな人生に変えてみろよ。』怜雄は最後に野中にそう話した。

『ああ、わかったよ。』そう答える野中の顔は、つい1時間前に店に入ってきた時とはまるで違う、優しい表情だった。

「janus」を出た野中を怜雄と茜は、見えなくなるまで見送っていた。そんな2人を道路の反対側の道から見つめる1人の老人がいた。それは怜雄の競馬仲間の馬場勝一だった。

数日後、怜雄と茜はとあるボクシングジムの前にいた。遠くからガラス越しにトレーニングをする野中の姿が見えた。

『怜雄さん、あれ野中さんですよね?ボクシングもう一度やり始めたんですね。』茜がそう言った。

『そうみたいだな。』怜雄は嬉しそうな顔でそう言った。

すると野中が、トレーニングを止めてこちらを見ながら外へと出てきた。

『あれ?気づかれちゃいましたかね。』茜がそう言った時、2人の横を1人の女性が通り過ぎて行った。

『違うよ茜ちゃん、あいついはほらそこの彼女の方を見てたんだよ。』怜雄は微笑みながらそう言った。

そして2人が送った視線の先には、楽しそうに言葉を交わす野中と、丸山彩香の姿があった。

『あれが彩香さんなんですね、元に戻れたんですね。』茜がそう言った。

『これからが始まりだ。』怜雄はそう言うと、見つめていた野中と彩香に背を向けて歩き出した。

『ちょっと怜雄さん、野中さんに会って行かないんですか!』茜が大きな声を上げる中、怜雄の顔には笑顔が溢れていた。

その頃、喫茶店「ケンタロウ」では店主の小峰健太郎がいつものように暇そうにコーヒーカップを磨いていた。

その時、お店の扉が開く音がして、1人の髪の長い女性が入ってきたdoor

『いらっしゃいませ。』低い声で健太郎がそう言った。

『ここに来たら、大澤怜雄に会えるって聞いたんだけど、彼はいる?』

そう言葉を発したその女性は「アクア」のオーナー藤堂弥生だったsign03

~to be continue~

さあ、いかがでしたか今回の「アフスタ」はhappy01とても長編になりましたが、楽しんでいただけましたか?

また1人、怜雄のお店を訪れたお客が笑顔を取り戻して帰っていきましたねconfident。気がつけば次回は早くも「第7話」ですpaper。徐々に物語も終盤へと差し掛かっていきますが、果たしてどんな展開が待っているのか、乞うご期待ですscissors。作者(僕)が原稿を、来週も締め切りに間に合わせる事を祈っていて下さいねcoldsweats01

それでは今日はこのへんで。チャオ(ciao!)

<今日の誕生花> 2月20日

0220

「黄梅」(おうばい)

花言葉は「恩恵、優美」です。

「黄梅」はモクセイ科の落葉低木で、中国を原産地とする観賞植物です。茎の若い部分は緑色で四角く、上部は垂れているのが特徴です。

黄金色の花の形が「梅」に似ているので「黄梅」と名付けられたそうで、中国では「この花が咲くと春が近い」という事で「迎春花」とも呼ばれています。

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