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2007年9月10日 (月)

夜明けの流星たち(第6話)

こんばんにゃ~ 北の猫男爵です。

さて、近頃は陽が沈むのも早くなり夕方6時頃になるとすっかり薄暗くなる季節になってきましたね。風も涼しげな秋風です。そんな秋の夜長には連続ブログ小説などいかがですか?本日は第6話をお送りしたいと思います。

博人と玲奈は病院での再会後、二人で会う約束を取る。しかし博人はまだ玲奈の病気の事は知らない、それは玲奈自身も同じ事だった。博人は迷走する自分自身に父修司の一言で少し光が差し込んだ。そんな中、博人の心は玲奈へと揺れ動くのか・・・

『夜明けの流星たち』  脚本・演出:猫男爵

☆Story6☆ 『流れ星』

聖北総合病院では玲奈の担当医の二階堂と婦長の結城が真剣な顔で話していた。

『先生、鈴木さんはどうなんですか?』

『うん・・・婦長も見ただろう、あの検査結果。どう見ても白血球の数値が高すぎる。ただ、症状的には発症する可能性は低いとは思うんだ。しばらくは様子を見てみないと何とも言えないところがある。一応、定期的に通院するように話しておいたから婦長も心得ておいてくれ。いずれは本人にも告知しなければならないしな・・・』二階堂の表情は曇りがちだった。

『はい、わかりました。』結城は真剣な表情で答えた。

翌日の土曜日、仕事が休みの拓実彩香と会っていた。

『ねえ拓実、博人は今日どうしたの?』

『何か、故郷から親父が来ていて今日帰るらしいんだけど、東京を観光して帰るから今日はそれに付き合うって言ってた。』

『そっか。何か仕事も忙しそうだし、なかなか前みたいに三人で会うのは難しいね。』彩香は寂しそうな顔でそう言った。

『彩香はどうなんだ?もう、英会話学校の方は慣れたのか?』

『うん、まだまだだよ。何かやっぱり学校の授業とは違うから難しい事が多くて。』

『まあ、彩香ならすぐに溶け込めるさ!頑張れよ!』拓実は彩香を励ました。

『俺さ、昨日涼子に会って来たんだ。ちょっと仕事でうまくいかなくてさ、そうしたら急に涼子の顔を見たくなって・・・あいつは凄く前向きだったよ。記憶障害の事なんてこれっぽっちも気にしてない素振りしてさ。それが俺には痛いほど解るから、逆にその姿見たら勇気を貰ったっていうか、やっぱ俺はあいつの事が凄く大切で・・・まあ、俺の事は思い出せなくても俺はあいつをずっと見守っていてやりたいって、あいつの心の支えになっていたいって思ったよ。』拓実は彩香に切実に語りかけた。

『それが拓実らしくていいよ。拓実らしい・・・』彩香は拓実の気持ちが痛いほど解っていた。

『そういえば博人のやつ電話で、何か道で倒れていた女の子を助けたら、御礼に誘われて明日会う約束したって言ってたな。道で倒れている人を助けるなんてあいつらしいな。』

『そうなんだ・・・そう言えば博人って彼女とかいないの?』彩香は少し間をおいて拓実に聞いた。

『そんな話は聞かないな。あいつは仕事一筋っていう面があるから。まあ、仕事が恋人なんじゃないの。』拓実は笑いながら答えた。

『そうなんだ。』彩香は拓実のその言葉に少し安堵の表情を見せた。

博人と修司東京駅にいた。

『博人、すまんな今日一日付き合わせてしまって。』

『何言ってるんだよ、たまにはこういうのも気分転換になっていいさ。』

『博人、あんまり無理して体壊さないようにな。』

『親父の方こそ酒の飲み過ぎには気をつけろよ、もう若くないんだから。』

『バカ野郎、若くないだと!まあ、それもそうだな。』修司と博人は笑顔で話した。

『おふくろにも宜しく言っておいてくれ。俺の事は心配するなって言っておいてくれ。』

『わかった。』

『あっ、それから親父!俺さ、親父の子供で良かったよ。親父の子供に生まれて幸せだよ。』博人は昨日の修司の言葉を思い出しながら話した。

『何言ってるんだよ急に、散々俺の事バカにしておいて。』修司は照れ笑いを浮かべながら答えた。

『じゃ、父さんもう行くからここでいいぞ博人。それじゃあな!』修司は恥ずかしさを隠すようにホームへと歩いて行った。

博人の目には、その修司の小さく丸くなった背中が大きく大きく映っていた。

日曜日の朝が来た。玲奈はいつもより早く目が覚め、化粧をして出かける支度を整えていた。

『玲奈、いつもより何かお洒落していない?』真知子が笑いながら言った。

『そんな事ないよ。ねえ、お母さん、この服似合ってるかな?』

『うん、似合ってるわよ。玲奈、良かったね楽しそうで。でも、あなたまだ病み上がりなんだから、あんまり無茶しないようにね。』真知子は楽しそうな玲奈の笑顔を見ながら喜んではいたが、内心は病気の事が気掛かりでしかたなかった。

『じゃ、行ってきます。』そう言うと玲奈は家を出た。

真知子はこんなに楽しそうな玲奈の笑顔を見たのは久しぶりだった。そして、3年前の悪夢を回想していた。

玲奈が以前付き合っていた男に暴力を振るわれ、傷だらけになって家に帰ってきたあの日の姿を思い出していた。しばらく玲奈の顔からは笑顔が消え、家にこもりがちになっていた日々の事を。その男はその後も必要に玲奈に付きまとっていたが、しばらくして別の傷害事件で逮捕され、玲奈の前には二度と姿を現さなくなった。それから玲奈は少しずつ笑顔を取り戻してきたが、男性に対する恐怖心は打ち消されてはいなかった。そんな玲奈が今は男の人に会いに行く事を楽しみにして、満面の笑みで出かけて行った。「きっとあの人なら、川嶋さんなら玲奈を救ってくれる。玲奈の心の支えになってくれる。」そう、真知子は強く願っていた。

南青山の駅前で玲奈は博人が来るのを待っていた。楽しみにしていたが、本当に博人が来てくれるのかという不安もどこかにあった。しかし、そんな玲奈の不安は一瞬にして吹き飛んだ。

『あっ、ごめんごめん遅れちゃって。』博人が小走りにやってきた。

『こんにちは、すいません今日は無理に誘っちゃって。』

『何言ってんの、そんな事ないよ。』

優しく答えてくれる博人の表情に玲奈は安心と心地よさを感じていた。

『じゃ、行こうか!』二人は笑顔で歩き出した。

二人はオープンカフェで食事をとっていた。

『でも、びっくりしたよ。だって道端に突然倒れるんだもん玲奈ちゃん。』

『ごめんなさい本当に。全然記憶が無くて・・・』

『まあ、たまには記憶がなくなるくらいお酒飲むのもいいけどさ、急性アル中になるまで飲まないようにしないとね。』

『はい、気をつけます。』二人は笑いながら話した。

『川嶋さんはどんなお仕事してるんですか?』

『そのさ、「川嶋さん」っていうのやめない?博人でいいよ、博人で。』

『はい、それじゃ、博人さん。』玲奈は少し照れながら呼んだ。

『俺の仕事はIT機器の製造会社でパソコンとかの部品を作っているんだ。その企画開発と営業をやっているんだ。何かお堅い仕事だろ。』

『いえ、何か凄い仕事ですね。大変そう。』

『玲奈ちゃんはどんな仕事してるの?』

『私はただのOLです。お茶入れたり、コピー撮ったり・・・つまんない仕事です。』玲奈はうつむきながら話した。

『そんな事ないよ玲奈ちゃん!顔を上げなよ。OLだって立派な仕事だよ。玲奈ちゃんにとってはつまらない事かもしれないけどさ、俺なんかさ外回りから帰ってきて、女の子が入れてくれたお茶飲むとさ疲れが吹き飛ぶし、急いでいる時にしっかり書類を用意してくれると助かるし、凄く役に立っていると思うよ。何も下を向く事もないよ!胸を張りなよ!』

『ありがとう博人さん。そんな事今まで言われた事なくて・・・』玲奈は博人の強い励ましに元気が出てきた。

仕事に対して悩みを抱えていそうな玲奈を見て博人が言った。『ねえ、玲奈ちゃん!どっか行こうか!』

『えっ?』突然の博人の言葉に玲奈は驚いた。

『そうだ!遊園地でも行こうよ玲奈ちゃん!』

そして博人は玲奈の手を取り、遊園地へと向かおうとした。その時、玲奈は博人の温かい手に出会ったあの日と同じ手の温もりを感じていた。

夕陽が沈むまで二人はまるで子供に還ったように無邪気にはしゃぎまわった。そして辺りはやがて夜の暗闇になっていた。

『玲奈ちゃん、大声出したら元気になったかい?』

『えっ?』

『お昼の玲奈ちゃんより、今の玲奈ちゃんの方が玲奈ちゃんらしいと思うよ。笑顔が一番似合っているよ。』

玲奈は博人が自分の事を心配してここに連れて来てくれた事に気づき、とても嬉しい気持ちに浸っていた。そして玲奈は博人を観覧車へ誘った。

『ねえ博人さん、観覧車乗ろうよ!』

『観覧車?よし、行こうか!』

二人は笑顔で観覧車へと走って行った。

やがて、二人を乗せた観覧車は上へと昇り始めた。狭い空間で二人の間にはしばらくの沈黙があった。それを避けるように玲奈が口を開いた。

『博人さん、また会ってもらえますか?』

博人は少し間をおき答えた。『俺でよければいつでも。』

『本当ですか?良かった・・・何か博人さんと話していると楽しくて。』玲奈は思わず本音が出てしまった。

二人は微笑み合っていた。

『あっ!流れ星!』玲奈が叫んだ。

流れ星はあっという間に消えてしまったが、それでも目を瞑って願い事をする玲奈を見ながら博人は自分の感情が少し揺れ動くような気がした。

気がつくと、二人を乗せた観覧車の上には満天の星空が広がり、二人を見ながら笑いかけるように光り輝いていた・・・         To be continue

二人で楽しく時を過ごした博人と玲奈、博人の中に微かにそして確かに玲奈に対する感情が小さく芽生え始めた。その一方で、せまりくる病魔の足音にまだ二人は何も気づいていない。果たしてこの先、博人と玲奈は幸せのレールを歩いていけるのか・・・次回第7話をご期待ください。

それでは今日はこのへんで。チャオ(ciao!)

(今日のマニアック有名人しりとり)

ろ 郎平(ろうへい。中国の元女子バレーボール選手。1980年代の中国黄金時代に活躍した名選手。1984年のロサンゼルス五輪では金メダルを獲得。その強力なスパイクは「鉄のハンマー」と称された。その後中国代表の監督やイタリア・セリエAのクラブチーム監督を経て、現在はアメリカ女子代表チームの監督を務めている。)

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