« 気は優しくて力持ち | トップページ | 夏の詩(うた)・・・ »

2007年8月10日 (金)

夜明けの流星たち(第2話)

こんばんにゃ~ 北の猫男爵です。

ようやくパソコンの部品が届いたので、今日からパソコンが使用できるようになりました。また本来の更新に戻ります。

今日は「連続ブログ小説」第2回です。それでは第1話からの続きをお楽しみください。尚、第1話を見逃した方は8月1日付けのブログを読んでから今日の第2話を読んでくださいね。

『夜明けの流星たち』 脚本・演出:猫男爵

☆Story2☆ 『名もなき運命』

場所は、「ピッチハウス」というショットバー。博人拓実がいつも行くちょっとお洒落なバーだ。席には拓実と彩香が既に座っていた。

『彩香変わんねえな。相変わらず元気そうだな。』

『拓実こそ変わらないね。そのおちゃらけた性格、昔のままだね。』

『バカ野郎、あんまり褒めんなよ。』

『別に褒めてないよ。でも良かった、拓実が変わってなくて・・・何か急に真面目になっていたらどうしようかと思った。』

『変わらないよ、俺も博人も。三人はいつまでも変わらない仲間だろ。変わりっこないよ。』

そこへ博人が現れた。

拓実が博人を呼んだ。『博人!こっちこっち!』

『悪い、ちょっと遅れちゃった。』

『彩香!』

『博人!』

『久しぶりだな!元気だったか?変わらないな彩香。』

『博人こそ変わらないね。』

そして拓実が音頭を取った。『よし、それじゃ三人揃った事だし、乾杯だ乾杯!三人の再会に乾杯!』

三人は時を忘れて、思い出話や昔話で盛り上がっていた。

彩香は笑顔で拓実に話しかけた。『へえ、拓実はそんな大きなプロジェクト任されているんだ。凄いね!』『博人はどうなの?仕事の方は順調なの?』

『うん・・・もう絶好調よ!』博人は自分の歯がゆい思いを打ち消すように答えた。

『彩香は?何でまた教師辞めて英会話の講師になろうと思ったんだ?苦労して取った教員資格だろ。何でそれを捨ててまで。』拓実が彩香に問いただした。

『私ね、通行止めの道に入っちゃったみたいなの・・・』

『通行止め?何だよそれ。』拓実は首を傾げた。

『前に進みたいんだけど道が無いのよ。どこか脇道がないか、飛び越えれば向こうに行けないかとか色々考えたんだけど、どうやっても行けないのよ・・・仕方ないからUターンしてもう一度その道をよく見てみたの。そうしたら、そうしたらね、今まで見えなかった道が見えたの。私、あまりにもその通行止めの目の前でしか物を見てなかったのよ。少し離れて遠くからそこを見たら、ちゃんと道があったのよ!夢中でがむしゃらに突き進むのもいいけど、冷静に物事を見極める事も必要なんだって気づいたの。だから、今は教師という仕事を離れて、外から離れた所から見てみようって。それからでも遅くないなってね。』

彩香の言葉に二人は返す言葉が無かった。

博人は自分のちっぽけさに恥じらいを感じた。そして、彩香の自分らしく生きる姿に少し嫉妬を感じたのも確かだった。

拓実が口を開いた。『偉いな彩香!お前はやっぱり彩香だよ!』

『何よそれ、どういう意味よ!もう拓実ったら、それ褒めてるの?』

『褒めてるんだよ、バカっ!』

『もう、バカ、バカって、さっきからうるさいわね拓実!』

そう、ふざけ合う二人を見ながら博人はこの場にいる事が辛くなっていた。自分は現実の流れに何となく流され、何となく生きて、それに疑問を感じても実際は何もできないでいる。そんな自分の惨めさを痛感していたからである。

『悪い、俺どうしても今日中にやらなきゃならない仕事あるんだよ。先帰るわ・・・』そう言うと、博人は二人から逃げるように店を出て行った。

『おい、ちょっと待てよ博人!せっかく彩香と久しぶりに会ってるっていうのに。』

『仕方ないよ、仕事が忙しいんじゃね。まあ、こっちにいる限りいつでも会えるしね。拓実、飲もう!』そう話す彩香は心の中で、博人の元気のない顔が少し気になっていた。

博人が帰った後、拓実と彩香は話し込んでいた。

『ねえ、拓実。』

『うん?』

『博人の様子何か変じゃなかった?』何かを感じ取った様子で彩香が拓実に聞いた。

『そうか?別にいつもと同じだったけどな。』

『それならいいんだけど・・・私の思い過ごしかな。』彩香は何か気になった様子を隠し切れなかった。『ところで拓実、涼子ちゃんはまだあのままなの?』

拓実はうつむいたままで返事がなかった。

『あっ、ごめん聞いちゃいけなかったかな?』申し訳なさそうに彩香が言った。

『いや、いいんだよ。涼子はまだあの時のままだよ。あの事故から前の記憶は蘇らないんだ。医者はさ、時間をかければ少しずつ記憶が戻るって言うんだけど、俺はもしかしたらもう二度と記憶は戻らないんじゃないかって・・・そう思うんだ。』

『そんな事ないよ、絶対に戻るって!拓実がそんな弱気でどうするの!』

『でもあの事故から8年だ。そう思っても仕方ないよ・・・』拓実はうつむきながら答えた。

涼子は拓実が21歳の時に付き合っていた彼女で、8年前の神戸の震災の時にちょうど親戚の家に遊びに行っていて、あの悪夢の惨劇に遭遇したのである。命は助かったものの、その時のショックが原因で精神性記憶障害に陥ったのである。医者は一時的なショック性のものだから、すぐに記憶を取り戻すと言ったが、8年経った今も記憶は戻らない。今も病院に通院する日々が続いている。

拓実は自分の存在を病院で知り合った患者仲間という事にして、退院後も友達として付き合っているのである。

『どうして、自分が彼氏だったんだよって正直に涼子ちゃんに話さないの?』彩香は拓実に聞いた。

『無理に事故の前の記憶を呼び戻す事で、あいつがまた事故の恐怖に脅えるんじゃないかって不安なんだ。だったら、過去よりも今のあいつを、そして未来のあいつをずっと見てあげようって、そう思うんだ。』拓実は唇を噛みしめながら話した。

『拓実は強いのね。昔からそう・・・何か辛い事があっても一人で我慢して元気なふりをして、影でいつも泣いていた。私も博人もそんな拓実の事をちゃんと見ていたよ。だからもう我慢しなくていいのよ。』彩香は心配した表情で話した。

『俺は我慢なんてしてねえよ。俺が寂しい顔したら場がしらけるだろ。俺は明るさだけが取り柄だから。』拓実は強がりを見せていた。

そんな強がる拓実の姿が彩香には痛かった。『うん、わかった。私も博人もどんな時でも拓実の味方なんだからね!辛い時はちゃんと話してよ。』

彩香のその言葉に拓実は小さくうなずいた。彩香の優しさが胸に響いていた。

違うバーで飲んでいたのはOLの玲奈真希だった。

『あのクソ課長、本当にムカツクわよね!女子社員はお茶酌みとコピーさえやればそれでいい。ふざけんじゃないっていうの!私たちの事を何だと思ってるのよ!それで何か都合の悪い事があれば、私たちに責任押し付けて、本当に最低よ!』玲奈は激怒していた。

『ちょっと飲み過ぎだよ玲奈。腹立つのもわかるけどさ・・・』

『けど、何よ!』

『だけどさ、私たちOLはそんな風にしか見られないのよ。悔しいけどさ、会社にとってはただのお茶酌み係とコピー係なのよ。歳を取れば、早く結婚して寿退社するのを待っているだけの存在なのよ。仕方ないのよ・・・』

『嫌だ!そんなの絶対許さない!私たちOLにだってプライドぐらいあるのよ!』そう言うと玲奈はぐったりとテーブルに顔を埋めた。

『ちょっと玲奈、帰るよ!もう、しょうがないわね。』真希は酔った玲奈を抱えて店を出た。

その時、真希の携帯電話が鳴った。『あっ、もしもし純平!うん、今ね友達と飲んでたの。えっ、これから?わかった、すぐ行くね。』真希は彼氏からの誘いがあり、ここで玲奈と別れる事にした。

『ねえ、玲奈・・・私これから彼氏の所行くから、玲奈はタクシー拾って帰るのよ。大丈夫?ちゃんと歩ける?』

『えっ?彼氏?真希、いつ彼氏できたの?聞いてないよ!』玲奈は酔いながらも驚いた表情を見せた。

『うん・・・実は1週間前に付き合い始めたばっかりなの。ほら、この前の合コン。玲奈は誘っても来なかったでしょ・・・あの時に知り合って、それから何回か会ううちにね。』

『そうなんだ・・・おめでとう真希!良かったね。』

『玲奈もさ、もう前の事は忘れてさ、男探しなよ。待ってたってイイ男は見つからないよ。』

真希のその言葉に玲奈は少し複雑な表情を見せた。

『本当に大丈夫?一人で帰れる?』

『うん、大丈夫よ。真希、もう私の事はいいから早くその彼氏の所に行きなよ。』玲奈は酔って半分聞き取れない口調で真希に返事をした。

『うん、わかった。じゃあね。』真希は少し小走りにその場から離れて行った。

店を出た博人は、自分がどうしたらいいのか解らないもどかしさを抱えながら家路へと歩いていた。交差点で信号待ちをしていると、後ろで人が倒れる気配がした。振り返ると若い女が倒れていた。それは玲奈だった。

『おい!ちょっと大丈夫か!おい!おい!』博人の強い呼びかけにも玲奈からの返答はない。博人はすぐに携帯電話を取り出し119番通報した。

『おい!今、救急車呼んだからな!もう少し待ってろよ!』玲奈の状態は変わらず意識がもうろうとしていた。

周りには野次馬が集まりだし、気がつけば沢山の人だかりになっていた。『おい、大丈夫かあの姉ちゃん?』そんな野次馬の声もあちこちから聞こえてきた。

まもなくして救急車が到着した。救急隊員が駆け寄り博人に尋ねた。『どうしたんですか?状況を教えて下さい。』

『いきなり後ろで倒れる音がして、振り向くとこの女性が倒れていて、その後はこのままなんです。』

『わかりました。』

『おい、外傷は見当たらないが、かなりアルコールの臭いがするな。すぐにストレッチャー用意だ!』別の救急隊員が叫んだ。

隊員達の手際のいい作業が始まり、玲奈は救急車へと乗せられた。『あなたも一緒に乗って下さい!』

『いや、俺はただ通り掛かっただけで、知り合いでも何でもないですから。』

『いいから早く乗って!』押し込まれるように博人は救急車へ乗せられた。

救急車の中では、慌ただしく動く隊員と専門用語が飛び交い博人は戸惑っていた。その時、少しだけ玲奈の意識が覚めた。うっすら開いた目を見て博人はどうしたらいいのか迷った。

やがて玲奈の手が博人の手へと伸びてきた。博人はその細い白い手を強く握りしめた。玲奈の冷たい手が博人の温かい手で優しく包まれていった。

『大丈夫。もう少しで病院だからな。』博人は静かに囁いた。少しだけ玲奈の顔が緩んだように博人は感じた。

玲奈は薄れゆく意識の中で、温かいぬくもりと優しさを感じていた。うっすら開いた瞳には、ぼんやりと博人の顔が映っていた。

この時、すでに全ては始まっていたのかもしれない・・・移りゆく世界の中で、僕たち二人を乗せた救急車は「運命」という名もなき旅路を走り始めた。そう僕たち二人だけの想いを乗せて・・・                                        To be continue

それでは第3話をお楽しみに。

昨日の姪っ子との「睡眠しりとり」は僕の勝ちで、対戦成績は僕の2勝1敗2分けです。

それでは今日はこのへんで。チャオ(ciao!)

(今日のマニアック有名人しりとり)

わ 若王子信行(わかおうじのぶゆき。1986年にフィリピンで起きた「三井物産マニラ支店長誘拐事件」の被害者である当時の三井物産マニラ支店長。誘拐犯から送られた右手中指は若王子さんのものではないかと、当時強烈な話題になったが、それは偽装であった。若王子さんは無事に無傷のまま解放されたが、3年後の1989年に55歳の若さで病死した。)

|

« 気は優しくて力持ち | トップページ | 夏の詩(うた)・・・ »

コメント

小説、結構楽しみにしています。
マニアックしりとりですが、当時流行りましたよね、中指をおって
「いま何時?」
「わかおうじ。」

投稿: Hこ | 2007年8月11日 (土) 10時58分

Hこさん
こんにちわ。
やっぱ、僕たちの時代は
『今、何時?』
『わかおうじ』ですよね!
中指を折るのも流行ました。懐かしいですね(笑)
今、大流行の「○○王子」の先がけは「若王子さん」です。

投稿: 猫男爵 | 2007年8月11日 (土) 13時36分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/211087/7415408

この記事へのトラックバック一覧です: 夜明けの流星たち(第2話):

« 気は優しくて力持ち | トップページ | 夏の詩(うた)・・・ »